日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボエーム」の意味・わかりやすい解説
ボエーム
ぼえーむ
La Bohême
イタリアの作曲家プッチーニのオペラ。1895年完成。全四幕。フランスの作家アンリ・ミュルジェールHenri Murger(1822―61)の小説『ボヘミアンたちの生活情景』をもとにしたイッリカとジャコーザの台本による。パリのラテン区に住む貧しい詩人ロドルフォと病身のお針子ミミの恋物語を中心に、彼らを取り巻く人々の日常を詩情豊かに描いたこの作品は、生き生きとした人物描写、色彩的な管弦楽、優れた舞台効果などにより、『トスカ』『蝶々(ちょうちょう)夫人』と並んでプッチーニの代表作の一つに数えられている。第一幕でミミが歌うアリア「私の名はミミ」はとくに名高い。1896年トリノで初演。日本における初演は1921年(大正10)ロシア歌劇団によるもので、日本人による初演は34年(昭和9)藤原歌劇団の第1回公演であった。
なお、同じイタリアの作曲家レオンカバッロも同じ題材により同題のオペラを発表(1897年ベネチア初演)しているが、今日ではほとんど上演されない。
[三宅幸夫]