日本大百科全書(ニッポニカ) 「藤原歌劇団」の意味・わかりやすい解説
藤原歌劇団
ふじわらかげきだん
日本の歌劇団。1934年(昭和9)テノール歌手藤原義江(よしえ)を中心に結成、同年6月『ラ・ボエーム』で旗揚げ公演を行った。それまで編曲や抄演が主だったオペラを本格的に全曲上演、『リゴレット』『カルメン』『トスカ』などのポピュラーな作品を手がけると同時に、『タンホイザー』『アイーダ』などを日本初演。第二次世界大戦前のオペラ歌手のほとんどはこの歌劇団の舞台に立っている。戦後の1946年(昭和21)いち早く『椿姫(つばきひめ)』『カルメン』などで大入りをとるが、1955年からテレビなどの影響で観客が減少し経営状態が悪化、1973年東京声楽専門学校校長の下八川圭祐(しもやがわけいすけ)(1902―1980)に経営を譲り、藤原は会長になった。藤原・下八川没後は、1980年から下八川共祐(きょうすけ)(1942― )が後を継ぎ、1981年には創作オペラを中心とする日本オペラ協会と合体し、財団法人日本オペラ振興会を結成して経営の安定を図るとともに、若手演出家の登用と、海外で活躍する林康子(やすこ)(1948― )らの招聘(しょうへい)により、新鮮でオーソドックスな舞台を提供。1985年、テノール歌手五十嵐喜芳(いがらしきよし)(1928―2011)を総監督に迎え(1999年6月まで)、創立以来のわかりやすく楽しいオペラづくりを積極的に推進している。
[寺崎裕則]