日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボローディン」の意味・わかりやすい解説
ボローディン
ぼろーでぃん
Александр Моисеевич Володин/Aleksandr Moiseevich Volodin
(1919―2001)
ロシアの劇作家。本名リフシツЛифшиц/Lifshits。農村の小学校で教師となる。1939~45年、第二次世界大戦に一兵卒として出征し負傷した。49年、国立映画大学シナリオ科を卒業し、「レンフィルム」スタジオで編集者として働きながら劇作の道に入る。革新的な若い織物女工を主人公にした『工場の娘』(1956)、平凡な市民たちの精神生活の豊かさを叙情的に描いた『五夜』(1959)、生きがいを求めて雄々しく生きる若い女優を主人公にした『うちの姉さん』(1961)などで劇作家としての確固たる地歩を固める。その後の作品に、『愛する者たちと別れるな』(1969)、『ドゥルシネヤ・トボスカヤ』(1971)、『とかげ』(1982)、『ブロンド』(1984)などの戯曲や、『誰も気づかなかった出来事』(1968)、『秋のマラソン』(1979)などの映画シナリオがある。『五夜』は79年にニキータ・ミハルコフ監督により映画化されて国際的な反響をよび、ペレストロイカ以降もしばしば上演されている。没後、旧ソ連時代に一貫して芸術派の姿勢を守った功績が再評価され、2003年からその功績をたたえサンクト・ペテルブルグでボローディン演劇祭が定期的に開催されるようになった。
[中本信幸]