知恵蔵 の解説
ボーイング787ドリームライナー
1982年に就航した中型双発機ボーイング767は省エネルギー設計、ハイテク仕様で機関士なしの2人乗務ができる機種だが、巡航速度はマッハ0.8と遅く航続距離も1万キロメートル程度と、中近距離に対応する設計だった。近年の航空路線の多様化や航空運賃の抑制傾向などを背景に、この767などの後継機種として新たに787が開発された。787は、エンジンなどの一部を除き、機体の大部分を金属から炭素繊維などの複合素材に置き換えることで、機体の強さを増すとともに製造工程の簡素化も図っている。この複合素材は、東レがその全てを供給している。また、主翼は三菱重工業、前部胴体は川崎重工業など、日本のメーカーが重要部分の製造を担当する。ターボファンエンジンを搭載し、巡航速度はマッハ0.85、従来の同クラス機と比較して燃費効率は20パーセントほど向上。中型機ながら航続距離は1万5千キロメートル前後あり、現存する長距離国際路線のほぼ全てについて直行運航が可能である。客席は2通路8席を基本に、座席数は国内など近距離線が約300席、長距離国際線は3クラス200席強となっている。客席の窓を大きくとり、加湿空調を採用するなど、快適性を大幅に向上させたという。また、機体の制御装置などを駆動する油圧系を、従来より減らして大幅な電化を進めたこともその特徴。油圧系配管が電線に置き換わり、軽量化とメンテナンス性の向上が見込める。バッテリーには、小型軽量で大きな電力を得られるリチウムイオン電池が、民間機で初めて採用された。このGSユアサ製造の電池が発火する事故が2013年1月に相次ぎ、日米など各国の航空会社が同機の運航を停止、事故原因の解明が進められている。
(金谷俊秀 ライター / 2013年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報