ボーイング787ドリームライナー(読み)ぼーいんぐ787どりーむらいなー//ぼーいんぐななはちななどりーむらいなー(その他表記)Boeing 787 Dreamliner

知恵蔵 の解説

ボーイング787ドリームライナー

米国ボーイング社の開発による中型旅客機愛称はドリームライナー。2011年、全日本空輸の成田-香港便が初就航全日空がローンチ・カスタマー(最初に開発・製造に踏み切らせる大口注文主)であることや、同機の部品の3分の1が日本の航空機産業各社から調達されていることなどから、日本の「準国産機」などとも称揚される。787には計画中も含めて、航続距離胴体の長さ・幅などの異なる4機種がある。このうち、現在(13年2月)就航しているのは長距離用の基本型となる787-8のみである。
1982年に就航した中型双発機ボーイング767は省エネルギー設計、ハイテク仕様で機関士なしの2人乗務ができる機種だが、巡航速度はマッハ0.8と遅く航続距離も1万キロメートル程度と、中近距離に対応する設計だった。近年の航空路線の多様化や航空運賃の抑制傾向などを背景に、この767などの後継機種として新たに787が開発された。787は、エンジンなどの一部を除き、機体の大部分を金属から炭素繊維などの複合素材に置き換えることで、機体の強さを増すとともに製造工程の簡素化も図っている。この複合素材は、東レがその全てを供給している。また、主翼三菱重工業、前部胴体は川崎重工業など、日本のメーカーが重要部分の製造を担当する。ターボファンエンジンを搭載し、巡航速度はマッハ0.85、従来の同クラス機と比較して燃費効率は20パーセントほど向上。中型機ながら航続距離は1万5千キロメートル前後あり、現存する長距離国際路線のほぼ全てについて直行運航が可能である。客席は2通路8席を基本に、座席数は国内など近距離線が約300席、長距離国際線は3クラス200席強となっている。客席の窓を大きくとり、加湿空調を採用するなど、快適性を大幅に向上させたという。また、機体の制御装置などを駆動する油圧系を、従来より減らして大幅な電化を進めたこともその特徴。油圧系配管が電線に置き換わり、軽量化とメンテナンス性の向上が見込める。バッテリーには、小型軽量で大きな電力を得られるリチウムイオン電池が、民間機で初めて採用された。このGSユアサ製造の電池が発火する事故が2013年1月に相次ぎ、日米など各国の航空会社が同機の運航を停止、事故原因の解明が進められている。

(金谷俊秀  ライター / 2013年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

ボーイング787ドリームライナー
ボーイングななはちななドリームライナー
Boeing787 Dreamliner

アメリカ合衆国ボーイングが開発した旅客機。長距離用の中型ワイドボディ機で,燃料効率の優れたロールス=ロイス・トレント1000またはゼネラル・エレクトリックGEnxターボファン・エンジンのどちらか 2基を装備する。胴体と主翼の半分以上に炭素繊維複合材を使用して軽量化をはかるなど,他機にはみられない大胆な技術革新を取り入れた。2003年,開発に向けて受注が始まると,旅客機としての経済性,快適性,環境性に優れ,乗客にとっては機内の空気清浄力が高まり,窓が大きく,手荷物の収納容積も大きくなって,乗り心地がよいなどの特性をうけて,多数の航空会社がこぞって予約注文を出し,受注数は原型機の試験飛行も始まらないうちから 800機をこえた。最初の発注者は日本の全日本空輸である。しかし技術の先進性に加え,世界中のメーカーに開発と製造の分担協力を依頼したため,開発作業に遅れが出て,原型 1号機が初飛行したのは当初の計画より 2年4ヵ月遅れの 2009年12月15日であった。量産開始も遅れ,1号機が全日空に引き渡されたのは 2011年9月となった。これは 2008年夏の北京オリンピック競技大会に向けた就航という計画に対して 3年以上の遅れだったが,その後の生産態勢は徐々に軌道に乗り,日本航空でも運航が始まった。標準型のボーイング787-8は 210~250席で航続距離 1万4200~1万5200km。

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