まそ鏡(読み)まそかがみ

精選版 日本国語大辞典 「まそ鏡」の意味・読み・例文・類語

まそ‐かがみ【まそ鏡】

[1] 〘名〙 鏡をほめていう語。立派な鏡。
万葉(8C後)五・九〇四「白栲の たすきを掛け 麻蘇鏡(マソかがみ) 手に取り持ちて」
[2]
(イ) 鏡を見る意で、「見る」にかかる。
※万葉(8C後)一一・二五〇九「真祖鏡(まソかがみ)見とも言はめや玉かぎる石垣淵(いはかきぶち)の隠りたる妻」
(ロ) 「見」と同音を含む地名敏馬(みぬめ)」「南淵山(みなぶちやま)」にかかる。
※万葉(8C後)六・一〇六六「真十鏡(まそかがみ)敏馬(みぬめ)の浦は百船(ももふね)の過ぎて行くべき浜ならなくに」
(ハ) 鏡は箱に入れてあるところから、「蓋(ふた)」と同音を含む地名「二上山(ふたがみやま)」にかかる。
※万葉(8C後)一九・四一九二「娘子らが 手に取り持てる 真鏡(まそかがみ) 二上山に 木の暗(くれ)の 繁き谷辺を」
② 鏡を磨(と)ぐの意で、「磨ぐ」に、床のそばに置くの意で、「床の辺さらず」に、鏡を掛けるの意で、「かく」にそれぞれかかる。
※万葉(8C後)四・六七三「真十鏡(まそかがみ)磨ぎし心をゆるしてば後に言ふとも験(しるし)あらめやも」
③ 鏡を月にたとえて、「清き月夜」「照り出る月」にかかる。ますかがみ。
※万葉(8C後)一一・二四六二「我妹子(わぎもこ)や吾れを思はば真鏡(まそかがみ)照り出づる月の影に見え来ね」
④ 鏡に映る影の意で、「面影(おもかげ)」にかかる。
※万葉(8C後)一一・二六三四「里遠み恋ひわびにけり真十鏡(まそかがみ)面影去らず夢(いめ)に見えこそ」
[補注]語源未詳。「ますかがみ」の変化したものとする説は、「ますかがみ」の確実な例が平安時代以降にしか見られないので疑問。一説に、「ま」は接頭語で、「そ」は完全な、そろった、などの意で、よく整った完全な鏡の意とする。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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