日本大百科全書(ニッポニカ) 「マルコビッツ」の意味・わかりやすい解説
マルコビッツ
まるこびっつ
Harry Max Markowitz
(1927―2023)
「近代ポートフォリオ理論の父」とよばれるアメリカの金融経済学者。シカゴ生まれ。1954年にシカゴ大学で博士号を取得し、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ペンシルベニア大学などを経て、ラトガース大学教授。1990年にW・F・シャープ、M・H・ミラーとともにノーベル経済学賞を受賞した。受賞理由は「ポートフォリオ(資産運用の組合せ)理論の発展に貢献した」ことである。
シカゴ大学在学中の博士論文「Portfolio Selection」と、これを発展させた1959年の主著『Portfolio Selection : Efficient Diversification of Investments』(『ポートフォリオ選択論』)で、投資家が異なる期待収益率とリスクを有する多数の銘柄の資産を組み合わせて投資するポートフォリオ理論を確立した。1銘柄ではなく多数銘柄への投資がリスク回避につながるという経験則を数学的に裏づけ、「リスク」を分散という数学概念を用いて、初めて資産選択を科学的に位置づけた。マクロ経済学や財政学などの経済理論が主流であったノーベル経済学賞で、初の金融実務部門の受賞者となった。
[金子邦彦]
『鈴木雪夫監訳、山一証券投資信託委託株式会社訳『ポートフォリオ選択論――効率的な分散投資法』(1969・東洋経済新報社)』