改訂新版 世界大百科事典 「マンジュシャゲ」の意味・わかりやすい解説
マンジュシャゲ (曼珠沙華)
ヒガンバナ科ヒガンバナの別名。有毒植物であるが鱗茎(球根)をすりつぶして水にさらし毒抜きをし食べられるので,縄文時代に食用にするため中国から持ちこまれ野生化したものであろう。花の時期には葉はまだなく,終わってから葉をひらき,春には葉が枯れるので,すこし異様であるが最近では観賞用に栽培される。日本に野生するのは三倍体で,種子はできないから人間が持ち歩いたものである。
執筆者:堀田 満 曼珠(殊)沙華ということばはサンスクリットのマンジューシャカmañjūṣakaの音写で,如意花,檻花などとも漢訳されるが,このインドの植物は中国や日本の赤いヒガンバナではなく,白い花を咲かす類品と思われる。仏典では,曼殊沙華は曼陀羅華,摩訶(まか)曼陀羅華,摩訶曼殊沙華,蓮華とともに〈五天華(てんげ)〉の一つとされる。これらは,仏陀や如来が法を説こうとするときなどに,天神の喜びの意に従って空中におのずから生ずる天界の花で,会いがたいことに会う喜びをあらわす。
執筆者:高橋 明
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