仏典にあらわれる天華(てんげ)(天界の花)の一つ。釈迦や如来たちの悟りや説法に際し,これを喜ぶ神々の意に従っておのずから空中に生じ降りそそぐとされる。また,須弥山(しゆみせん)の頂上には高さ百由旬(1由旬≒14km)の巨大な曼陀羅の樹があり,その下では三十三天が遊んでいるという。忉利天,極楽世界,さまざまな仏国土を荘厳する花樹としても登場する。サンスクリットのマンダーラバmandāravaの音写で,モデルはマメ科のデイコとされる。樹高は20mにも達し,初夏(インドでは3~4月)には深紅色から紫紅色の花を長さ30cm内外の総(ふさ)状につける。デイコはまたパーリジャータpārijāta(〈波利質多(はりしつた)〉と音写)とも呼ばれ,ヒンドゥー教の神話では神々とアスラが乳海攪拌(かくはん)を行ったときに生じ,インドラ(帝釈天)の天を荘厳するものとなったとされる。なお,マンドラゴラや麻酔作用をもつチョウセンアサガオを曼陀羅華と呼ぶこともある。
執筆者:高橋 明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報
…サルファ剤の発見,A.フレミングによるペニシリンの発見,それに続く種々の抗生物質の発見・合成は,今日の外科無菌手術に大きな進歩をもたらした。1805年(文化2)世界に先駆けて華岡青洲が曼陀羅華(まんだらげ)(チョウセンアサガオ)を主成分とした麻沸湯による全身麻酔で乳癌の手術に成功した。それから約40年後アメリカのW.T.G.モートンらがエーテル麻酔に成功,以来吸入麻酔用ガスの開発は近代麻酔学の基礎となった。…
…1649年(慶安2)出島に到来したオランダの医師カスパルはフランスの外科医パレの医学を伝えたが,彼の教えた医学はカスパル流外科として知られる。 1774年(安永3)に杉田玄白,前野良沢らによってクルムスJ.A.Kulmusの解剖書を翻訳した《解体新書》が刊行されたが,それから31年後の1805年(文化2),華岡青洲は曼陀羅華(まんだらげ)(チョウセンアサガオ)を主とした麻沸湯による全身麻酔下での乳癌手術に成功している。これはW.T.G.モートンらのエーテル麻酔に先立つこと約40年であった。…
…熱帯アジア原産のナス科の一年草(イラスト)。中国名は曼陀羅華(まんだらげ)。江戸時代に輸入され薬用のために栽培されたが,現在はほとんど見られない。…
※「曼陀羅華」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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