( 1 )梵語 Tathāgata の語構成を、tathā (如此・如実に)+ gata (去った)とみて「如去(にょご)」と訳す場合もあるが、漢訳仏典では、tathā+āgata (来た)とみて「如来」と訳す。
( 2 )修行完成者の意で一般諸宗教を通じての呼称であったが、後に仏陀の呼称となり、更に大乗仏教では諸仏の称ともなった。
サンスクリットのタターガタtathāgataの訳語。ほぼ仏陀の同義語として用いられる。tathāgataはtathā(〈そのように〉)とāgata(〈来たれる(者)〉)の合成語。インド人は真理はあらゆる言語的表現を超えると考え,真理を指す最小限の表現として,たとえば〈それtat〉という言葉を用いる。〈そのように〉もこの種の表現であり,中国人は〈如〉と訳した。したがって〈如来〉とは,〈真理そのものとして来たれる者〉の意となる。ただしtathāgataをtathāとgata(〈去れる者〉)に分解して〈そのとおりに去れる者〉と解釈する説もある。如来を指す次の呼称を如来十号といい,仏陀のすぐれた性格や能力を示している。応供(おうぐ)(=阿羅漢),正徧知(しようへんち),明行足(みようぐそく),善逝(ぜんせい),世間解(せけんげ),無上士,調御丈夫(ちようごじようぶ),天人師,仏,世尊。
執筆者:定方 晟 如来像はその超人的な特色として,三十二相あるいは八十種好(しゆこう)が仏典に説かれ,これらの名称や順位は諸経により異同がある。この中には,歯が40本ある(四十歯(しじゆうし)相)こと,最上の味を感じることができる(味中得上味(みちゆうとくじようみ)相)こと,心にしみる清浄な音声である(梵声(ぼんしよう)相)ことなど,造形的に表現することが不可能な項目があり,また三十二相などの中の表現可能な特色でも,必ずしもそのすべてが表現されているわけではない。現存作品に見られる形像上の一般的な特色は,およそ次の諸点である。頭頂が1段盛り上がっている(肉髻(にくけい)相),頭髪1本ずつが右回りに貝のように巻いている(螺髪(らほつ)),額の中央に1本の白く長い毛が螺髪のように右回りに巻いている(白毫(びやくごう)相),耳が大きく耳朶(じだ)が長い,手の指の間は水鳥の水かきに似ている(縵網(まんもう)相),輪宝(りんぼう)の形が足の裏(あるいは手のひらにも)に現れる(足下二輪相),胸部に卍字が現れる,両肩が丸々として豊かである(肩円好相),全身が金色である(金色相),全身を包む光が頭部(頭光(ずこう))と身体(身光(しんこう))の背後に表される(丈光(じようこう)相),衣服は大衣(たいえ)を着るが,甲冑のような厳身具は身につけないことなどがおもな特色である。大衣は当初から無地の布として表現され,日本の場合,中世以降でもそれに従った作例が多いが,中国で造像された如来像の中には,大衣に装飾文様を加えた例が見られるようになる。こうした趣向を反映して,日本では平安時代後期以降の作例に細密な文様,主として丸花文を配する像が多くなる。如来像の作例は釈迦,薬師,阿弥陀が遺品の大半を占め,その他に大日,弥勒なども造られている。これら如来像の形像上の差は,手や指の形(印相(いんぞう))と持物によって区別される。
執筆者:関口 正之
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釈迦(しゃか)の異名(これを「名号(みょうごう)」と称する)の一つ。サンスクリット語、パーリ語のタターガタtathāgataの訳。原語は「修行完成者」「完全な人格者」を意味し、初めはバラモン教以外の出家者一般のうち、とくに優れた人への尊称として広く用いられたが、のちには仏教だけが用いるようになった。tathā(「如」と訳され、真理・ありのままを表す)とāgata(「来る」の意のアーガムāgamの過去完了)の合成と解して「如来」と訳されたが、tathāとgata(「行く」の意のガムgamの過去完了)の合成とも解され、その際には「如去(にょきょ)」の訳となる(チベット訳はこのほうをとっている)。釈迦の異名は数多くあり、そのうちとくに「十号」(10の名号)がよく知られているが、そのなかでもこの「真如から来て衆生(しゅじょう)を導く」意の「如来」は、もっとも尊ばれ親しまれた。のちに大乗仏教がおこり諸仏がたてられると、そのなかに、薬師如来や大日如来のように、如来名をとるものも現れる。
[三枝充悳]
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仏につけられた十尊称の一つ。悟りを完成させた人。サンスクリット語はタターガタで,この語にはタター+アーガタとタター+ガタという2種類の解釈がある。タターは「真理」を,アーガタは「来た」を,ガタは「行った」を意味するので,前者の解釈によれば「真理の世界よりこの世に来たもの(=如来)」,後者では「真理に到達したもの(=如去(にょこ))」を意味することとなる。大乗仏教では前者の解釈が主流で,苦しみ悩む人々の救済者という面が強調された。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…変化(へんげ)の仏,応化(おうけ)の仏の意で,人々を救済するために如来(仏)が別な姿で現れるその身をいう。仏教では如来の三身(法身,報身,応身)を説くが,その応身にあたる。…
…また仏陀の像のみを指す場合と,仏教の尊像すべてを総称して仏像と呼ぶ場合とがあり,前者を仏陀像,後者を仏教像として区別する必要がある。仏陀像は元来は仏教の開祖である釈迦仏に限られていたが,やがて過去仏や千仏の思想を生み,大乗仏教では阿弥陀,阿閦(あしゆく),薬師,毘盧遮那(びるしやな),大日(だいにち)などの仏陀(如来ともいう)が考え出された。また密教独得の特殊なものとして仏頂尊勝や仏母の信仰がある。…
※「如来」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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