日本大百科全書(ニッポニカ) 「マーカー原油」の意味・わかりやすい解説
マーカー原油
まーかーげんゆ
marker crude oil
国際的な原油取引の際に価格指標(マーカー)として用いられる原油のこと。指標原油ともいう。現在、マーカー原油として機能しているのは、アメリカ産ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油、北海ブレント原油、中東ドバイ原油の三つであり、この3原油の市場価格(スポット価格、先物価格など)を基準に、品質による価格差などを考慮して多種多様な原油の販売価格が決定されている。なお、WTIはアメリカ市場向けの原油取引、ブレントは欧州市場向けの原油取引、ドバイはアジア市場向けの原油取引の価格指標となっている。かつて1970年代から1980年代前半にかけて、国際石油市場では原油は産油国政府が通告する政府公式販売価格(GSP)に基づいて販売されるケースが多かった。しかし、1980年代なかば以降の石油市場における需給緩和基調のもと、原油価格の決定方式は徐々に市場の需給状況をより正確に反映する方式に変化してきた。今日ではマーカー原油の市場価格に基づく方式が主体となっており、その方式で取引される原油の数量は合計で1995年には1日当り約1600万バレルと国際的な原油取引の大半を占めるに至っている。
[小山 堅]