知恵蔵 「ミクロ計量経済学」の解説 ミクロ計量経済学 計量経済学とは、経済データ間の関係性を統計的に分析する手法である。伝統的には、国民所得と消費水準のようなマクロ統計データの関係性を見るマクロ計量経済学が支配的であった。しかし、20世紀末、ミクロ計量経済学と呼ばれる新しい分野が登場し、その主導者であるジェームズ・ヘックマンとダニエル・マクファデンは、2000年にノーベル経済学賞を受賞した。その理由は、政策的関心が経済成長予測のようなマクロ経済分析からよりきめの細かなミクロ経済分析へシフトしてきたこと、集計に手間の掛かる家計や企業のような個票データが豊富になってきたこと、などである。ミクロ計量経済学の代表的なものには、パネルデータ分析がある。同一の経済主体を通時上追跡したパネルデータを用いることによって、経済主体の質的特性のような従来は計れなかったような潜在変数をモデルから割り出すことができる。また、あれかこれかという離散的な選択の問題を扱う分析もある。そうした離散選択問題は、ロジットあるいはプロビットと呼ばれるモデルを用いることによって、経済主体の個人特性や選択肢固有の属性が選択確率に与える効果を測定可能にした。ミクロ計量経済学は、政策が経済主体に与える個別効果を測定することができるので、今日の政策評価にとって必要不可欠な道具となっている。 (依田高典 京都大学大学院経済学研究科教授 / 2007年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報 Sponserd by