日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミヘ」の意味・わかりやすい解説
ミヘ
みへ
Mixe スペイン語
メキシコのオアハカ州東部の山地を中心に居住する人々。ミヘ語を話し、一部はスペイン語とミヘ語を話す。人口約5万4000余(1970)。周辺のサポテコ人や、マヤ系諸民族と異なり、古代文明の発達はみられなかった。辺境にあり、資源も乏しいことから、スペイン人植民者など外部からの干渉が少なかったため、民族アイデンティティや伝統を比較的よく維持している。トウモロコシ、フリホル(インゲンマメ)、カボチャ、ジャガイモなどを中心に焼畑農耕を営んでいるが、自給率は低く、出稼ぎによって補っている。アボカド、コーヒーなどの作物や、ヒツジ、ヤギ、牛、シチメンチョウ、ニワトリなどの家畜も現金収入源である。織物や土器つくりも行われているが、伝統工芸は一般に素朴である。市による交易が周辺のサポテコ人などとの間で盛んだが、概して従属的な立場にある。親族は双系的で、家族は核家族が基本である。行政的には、メキシコの行政区分であるムニシピオに組み込まれているが、共有的土地所有形態などに、伝統的側面も残されている。宗教はカトリックだが、土着信仰との習合の要素が強い。シェマビエとよばれる土着の占い師もいて、洞穴や山頂などの聖地で、シチメンチョウやニワトリなどの供犠(くぎ)が行われる。
[稲村哲也]