内科学 第10版 「ムコール菌症」の解説
ムコール菌症(真菌感染症)
ムコール菌は,自然界に広く分布し,通常,非病原性の真菌とみなされている.しかし,糖尿病患者,あるいは白血病やAIDSなどで免疫能が低下した患者において病原性を有し発症する.深在性では,脳型,肺型,消化管型,全身播種型などに分けられている.脳型ムコール菌症は,口腔内や副鼻腔を侵入門戸とし眼窩部や動脈に侵入・血栓形成し,局所破壊病変や脳病変を引き起こす. 神経症状では,眼球突出,眼筋麻痺,片麻痺が多く,眼窩内症状と髄膜刺激症状を認めたらまず本疾患を疑う.海綿静脈洞,眼動脈,内頸動脈の血栓症を随伴し,血管への親和性が強い特徴がある.鼻腔,結膜の分泌液の培養,羅患部位の生検により診断する. 治療はアムホテリシンBあるいはアムホテリシンBリポソーム製剤と5-FCの併用療法を行う.[津川 潤・坪井義夫]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報