日本大百科全書(ニッポニカ) 「肺塞栓症」の意味・わかりやすい解説
肺塞栓症
はいそくせんしょう
多くは静脈血栓、とくに下肢の深在静脈血栓が剥離(はくり)して肺動脈に流入し、肺動脈が閉塞されて生ずる疾患で、外傷とくに高齢者の骨盤や大腿(だいたい)骨の骨折、火傷(やけど)、手術、産褥(さんじょく)、心疾患、悪性腫瘍(しゅよう)、血液疾患などのときに発生しやすい。日本での頻度は欧米の約10分の1程度であるが、逐年増加の傾向にある。症状は、塞栓のおこった部位と血流遮断の範囲によって異なり、まったく無症状のものから、肺動脈主幹の閉塞による突然死まで多様である。中等度の塞栓の場合には、呼吸困難、胸痛、チアノーゼ、血痰(けったん)などがみられる。診断には胸部X線写真、心電図、血液ガス測定などを行うが、確定診断は肺血流スキャン、肺動脈造影によらない限り困難である。
[山口智道]