医学的には〈ふくびくう〉と読む。鼻腔と交通していて,周囲の骨の中に発育した,空気で満たされた空間(含気腔という)をさし,上顎洞,篩骨(しこつ)洞,前頭洞,蝶形(ちようけい)洞の四つが顔面の各側に存在する。副鼻腔も年齢とともに発育する。出生時には小さいながらも上顎洞,篩骨洞,蝶形洞はあるが前頭洞は前部篩骨洞から発生し,3歳ころからみられるようになる。いずれもその発育は思春期を過ぎても続く。上顎洞sinus maxillarisは,頰部や口蓋の大部分を構成する上顎骨内にあり,最も大きな副鼻腔で成人男子で約13cm3,女子で12cm3の容積を有する。したがって,上方は眼窩(がんか),下方は歯牙と密接な関係がある。篩骨洞sinus ethmoidalesは篩骨蜂巣(ほうそう)とも呼ばれ,6~20個の小さなハチの巣状の空間の集まりで,部位は両眼の間にあたる。鼻腔への交通路が中鼻道にあるものを前部篩骨洞,上鼻道にあるものを後部篩骨洞と呼ぶ。外側にあたる眼窩との境界は非常に薄いため紙様板と呼ばれる。前頭洞sinus frontalisは額からまゆ毛のあたりを構成する前頭骨内にあり,前部篩骨洞から発生してくるために,幼少時の炎症などによって発育が阻害されることが多く,全副鼻腔中,発育不全の率が最も高い。両側の前頭洞の発育不全は5%の人にみられる。蝶形洞sinus sphenoidalisはいちばん後方にある副鼻腔で,視神経や内頸動脈に近接し,後上方には下垂体が存在する。副鼻腔の内面は薄い骨粘膜から成り,その厚さは上顎洞で0.12mmといわれる。粘膜表面は鼻腔と同様に繊毛がみられ,その上にさらに粘液が層をなしてゆっくりと鼻腔との交通路(これを自然口という)に向かって流れていく。立っているときは,上顎洞や蝶形洞の自然口の位置はかなり上にあるため,繊毛の作用が衰えると分泌物が排出されなくなり,炎症が治りにくくなる。副鼻腔の炎症は副鼻腔炎と呼ばれ,うみが腔内にたまりやすいことから蓄膿症とも呼ばれる。副鼻腔の役割については,頭蓋骨の軽量化,共鳴腔,粘液の供給,外傷のショック緩衝装置など,さまざまな仮説が提出されているが,まだ確立されていない。
→鼻
執筆者:市村 恵一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鼻腔を囲む周囲の骨内にみられる空気の腔所で、上顎洞(じょうがくどう)、前頭洞、篩骨洞(しこつどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)がある。これらはいずれも鼻腔に通じている。とくに上顎洞は副鼻腔炎をおこす箇所となる。
[嶋井和世]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 ダイビング情報ポータルサイト『ダイブネット』ダイビング用語集について 情報
…鋤鼻器官はヒトを含む高等霊長類など一部のグループには欠けているが(ヒトでは発生過程で退化消失),その他の動物では鼻の底部正中面の近くにあり,二次口蓋を貫く鼻口蓋管で口蓋前部に1対の小孔として開く(高等霊長類では鼻口蓋管は痕跡化し,切歯管と呼ばれる)。また鼻腔の周囲の骨には,篩骨(しこつ)洞,上顎洞など最大13種もの空洞が付属し,これらを一般に副鼻腔という。それらの機能はほとんど知られていない。…
…鼻甲介の間の陥凹は通常空気の通り道となるので鼻道meatus nasiと呼ばれ,鼻甲介に対応した名前がつけられている。中・上鼻道には副鼻腔との交通路が開く。鼻腔は呼吸の道として空気が出入する以外に,吸気を温めたり湿らせる空気調節作用がある。…
※「副鼻腔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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