改訂新版 世界大百科事典 「メタタングステン酸塩」の意味・わかりやすい解説
メタタングステン酸塩 (メタタングステンさんえん)
metatungstate
タングステン酸が縮合してできるポリタングステン酸の一つのメタタングステン酸の塩。一般式MI6[H2W12O40]・nH2O(MI2O・4WO3・nH2Oとも書ける)。古くはMI10[H2(W2O7)6]のように書かれたこともある。同じ組成のMI3[W6O21]を擬メタタングステン酸塩と呼ぶこともある。多く無色の,水に可溶の結晶。水溶液は冷却すると結晶しやすく,濃縮するとシロップ状になる。アンモニウム塩,アルカリ金属塩などは水に易溶,鉛(Ⅱ)塩,水銀(Ⅱ)塩などはきわめて難溶である。一般にタングステン酸塩水溶液に過剰のタングステン酸を加え塩酸で酸性にするか,メタタングステン酸塩水溶液の複分解によって得られる。構造は図のように八面体6配位の[WO6]イオンが12個縮合した[H2W12O40]6⁻のようなイオンの存在が知られている。このイオンの中心は四つのOによって四面体がつくられており,これにリンP原子が入ると[PW12O40]3⁻となる。
→リンタングステン酸塩
執筆者:中原 勝儼
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報