イタリア北部の都市フィレンツェ(Firenze、〈英〉Florence)にある、かつてのメディチ家の居館。メディチ家は、ルネサンス期のフィレンツェで銀行家・政治家として台頭し、実質的な支配者となり、のちにはトスカーナ大公国の君主にのぼりつめた一族である。その豊かな財力を背景に、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロなど多数の芸術家のパトロンとなり、ルネサンス文化が花開く原動力となった。この建物は、メディチ家のフィレンツェ支配を確立したコジモ・デ・メディチ(Cosimo de' Medici、1389~1464年)が、1444年に、お抱え建築家のミケロッツィの設計により建てたものである。宮殿というには簡素な外観だが、その内部は対照的に、メディチ家の隆盛を物語る華麗なものだった。◇その後、この宮殿はリカルディ家の手に渡り、大幅に改装が施されている(この宮殿がメディチリカルディ宮殿と呼ばれる由来でもある)。この宮殿の最大の見どころは、「東方の三博士礼拝堂」、あるいは「マギ礼拝堂」(La Capella dei Magi)と呼ばれる小さな礼拝堂である。ここの内壁一面に、ベノッツォ・ゴッツォリ(Benozzo Gozzoli、1421頃~1497年)の大作「東方三博士の行列」(フレスコ画)がある。