改訂新版 世界大百科事典 「モグラネズミ」の意味・わかりやすい解説
モグラネズミ (土竜鼠)
mole-rat
zokor
体型がモグラ(食虫目)に似る,齧歯(げつし)目ネズミ科モグラネズミ属Myospalaxの哺乳類の総称。中国からモンゴル東部,シベリア南部にかけて8種が分布する。体長15~27cm,尾長3~7cm,体重150~250g。体はずんぐりとしており,四肢は短いが強力。前足には長くがんじょうなつめがあり,とくに第3指が大きい。耳介はなく,目はきわめて小さく,ほとんど毛に隠れる。体毛は長く絹毛状で,上毛がない。背面は種によって灰色,灰褐色,明るい赤褐色,桃色をおびたベージュなどで,腹面はふつう淡い。山地の耕作地や林の地下にトンネルを掘ってすむ。強大なつめと門歯で穴を掘り,地下のおよそ2mのところに主要なトンネルと巣室,食物貯蔵室,便所がある。夜はときどき地上で活動し,食物は植物の根と穀類で,しばしば農作物に加害する。3~5月ころ1産2~6子を生むらしい。
なお,アフリカ産のアフリカモグラネズミTachyoryctes(ネズミ科)もモグラネズミに類似し,英名にはAfrican mole-ratがつけられている。さらに,アフリカ産のデバネズミ科Bathyergidaeの齧歯類も同様な習性をもち,やはり英名でAfrican mole-ratと呼ばれ,混同しやすい。デバネズミ科の1種ハダカデバネズミHeterocephalus glaber(英名naked mole-rat)はほとんど体毛や汗腺がなく,哺乳類中もっとも体温調節能力が低いことで知られる。
執筆者:今泉 忠明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報