日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ヤンバルウケグチヒイラギ
やんばるうけぐちひいらぎ / 山原受口柊
bigscaled ponyfish
[学] Secutor megalolepis
硬骨魚綱スズキ目ヒイラギ科に属する海水魚。日本では沖縄本島でとれているが、タイランド湾、ジャワ島、チモール海を経てオーストラリアのサンゴ海沿岸に分布する。体は卵円形で、側扁(そくへん)する。体高は体長の2分の1よりも高い。体の腹部外郭は背部外郭よりいっそう強く湾曲する。頭部背縁は目の上方で著しくくぼむ。口は小さく、突出させたときに上を向く。主上顎骨(しゅじょうがくこつ)の後端は目の前縁下に達しない。上下両顎に明瞭(めいりょう)な犬歯状の歯がない。鰓耙(さいは)数は上枝と下枝をあわせて21~25本。体の鱗(うろこ)は比較的大きく、胸びれと腹びれの基底の間に9~11列の鱗がある。頬(ほお)と胸部には全域に鱗がある。側線有孔鱗(ゆうこうりん)数は42~49枚。体は全体に銀色で、背側面におよそ10本の暗色の横列斑(はん)や横帯がある。背びれ棘(きょく)部の鰭膜(きまく)の縁辺は黒い。水深50メートル以浅の沿岸や内湾の砂泥底に群れですみ、汽水域や淡水域にも侵入する。おもにコペポーダ、アミ類、植物の残骸(ざんがい)物などを食べる。最大全長は7センチメートルになるが、普通は約5センチメートル。日本では沖縄本島でしかとれていない。東南アジアではおもにトロール網、地引網などで混獲され、大きいものは食用に、小さいものはアヒル類や養殖魚の餌(えさ)にするか、魚粉に利用するが、ほとんど捨てられる。
本種は上下両顎に犬歯がなく、口が前上方に向くウケグチヒイラギ属に属する。日本にはこの属にもう1種、鹿児島県内之浦(うちのうら)湾からホソウケグチヒイラギS. indiciusが知られている。ホソウケグチヒイラギは体高が低くて、体長の2分の1以下であること、頬に鱗がないこと、体の背側面の横列斑や横帯が15~22本あることなどで本種と区別できる。
[尼岡邦夫 2024年7月18日]