日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゆで物」の意味・わかりやすい解説
ゆで物
ゆでもの
食品を湯の中で沸騰またはそれに近い温度で加熱したもの。料理の下準備として行われることが多い。ゆでることで食品は柔らかになり、あくが抜ける。色彩は変化しないものもあるが、エビやカニはゆでると赤くなり、緑の野菜は緑の色彩が美しくなる。乾物や豆類はゆでると柔らかくなって容積は増えるが、反対に水分の多い野菜類は、水分が流出して容積が少なくなる。ゆでるという調理法は、原始時代から行われていた。それには身近にある温泉熱や火山熱が容易に利用できたのである。いまでも別府(べっぷ)温泉の温度の高いところでは、大いに利用されている。食品のもつあくを抜くには、水だけでなく灰を加えたり、米のとぎ汁、糠(ぬか)などを用いる。食塩を加えると食品の持ち味を流さない効果がある。ウド、蓮根(れんこん)などをゆでるときには酢を加えるが、これは、茶褐色のポリフェノール系色素が酸の作用で白くなるからである。
[多田鉄之助]