沸騰(読み)フットウ

デジタル大辞泉 「沸騰」の意味・読み・例文・類語

ふっ‐とう【沸騰】

[名](スル)
わきあがり煮えたつこと。沸点に達し、液体の表面からだけでなく、内部からも気化が起こり、気泡がのぼりはじめる現象をいう。「やかんの湯が沸騰する」
盛り上がること。騒然となること。「世論が沸騰する」「人気沸騰
物価などが激しい勢いで上昇すること。「株価が沸騰する」
[類語]沸き立つ沸き上がる沸き返る煮えたぎる煮えくり返る煮え返る煮え立つ煮立つ沸くたぎる沸かす煮沸蒸発揮発蒸留

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精選版 日本国語大辞典 「沸騰」の意味・読み・例文・類語

ふっ‐とう【沸騰】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物、特に液体が、沸きあがること。また、高く起こり立つこと。
    1. [初出の実例]「ジンジンビヤが沸騰(フッタウ)するやうに怒るといふ詼謔か」(出典当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉一〇)
    2. [その他の文献]〔詩経‐小雅・十月之交〕
  3. 煮えたつこと。液体を熱すると、その蒸気圧が、液体表面にかかる外気圧よりも大きくなるため、表面からの蒸発だけでなく液体内部からも気泡となって蒸発すること。また、その現象。
    1. [初出の実例]「水は〈略〉全然無気の境に在ては財かに掌の温を以て沸騰す」(出典:舎密開宗(1837‐47)内)
  4. 激しく、騒がしくなること。騒然となること。
    1. [初出の実例]「哀号の声、沸騰して路に載(み)つ」(出典:江戸繁昌記(1832‐36)初)
    2. [その他の文献]〔嵆康‐幽憤詩〕
  5. ( 形動 ) 非常に騰貴すること。物価などがきわめて高くなること。また、そのさま。
    1. [初出の実例]「何況爾来歳不熟、米価沸騰貴於玉」(出典:星巖集‐丁集(1841)玉池先生集三・苦霖行)
    2. 「魚肉の鮨と同値では、チト沸騰なる価であらうぞ」(出典:歌舞伎・忠臣蔵年中行事(1877)正月)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「沸騰」の意味・わかりやすい解説

沸騰
ふっとう
ebullition
boiling

液体が気化して蒸発するとき蒸気圧が温度とともに増大するが、蒸気圧が増して液体内部で気化がおきて泡になって表面に出て行く現象、すなわち液体が内部から気化する現象をいう。一般に沸騰は沸点よりやや高い温度でおこる。沸点は液相がその飽和蒸気平衡を保って共存する温度であるが、飽和蒸気圧というのは平らな液面と接して平衡にある気相の圧力である。しかし液体内部にできる気泡は液体の凹面で囲まれているため、表面張力によって気泡内の圧力は液体の圧力より大きくなければならない。沸点に相当する飽和蒸気圧の気泡は表面張力のために押しつぶされてしまって気化することができない。このため、液体内部の気泡を気化させるためには、沸点よりもかなり高い温度にして気泡内の圧力が表面張力に打ち勝つようにしなければならない。このためきわめて純粋な液体は沸点よりかなり高い温度まで加熱しても沸騰しないままでいることができる。このような液体を過熱状態にあるといい、この現象を沸騰の遅れという。実際には容器の壁や液中のごみなどに吸着していた空気が解放されて泡となり、その中に液体が気化していって泡が成長することができるので、沸点よりごくわずか高い温度で沸騰することができる。過熱状態になって初めて突発的に沸騰し始める現象は突沸とよばれている。

 揮発性の2成分からなる溶液が蒸気と平衡を保つ場合に、その蒸気圧が1気圧となる温度は溶液の組成に依存するので、この温度を組成に対して描いたものを沸騰曲線または蒸発曲線とよんでいる。沸点において液体が気体に変わるために必要な熱は潜熱一種であり、気化熱または蒸発熱という。これは気体から液体になるときに放出される凝縮熱に等しい。

[平野賢一]

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改訂新版 世界大百科事典 「沸騰」の意味・わかりやすい解説

沸騰 (ふっとう)
boiling

一定圧力のもとで液体を加熱すると,液体がある温度に達したときから,液体表面での気化(蒸発)のほかに液体内部からも気化が始まり,液体内に蒸気の気泡ができる。この液体内部から起こる気泡の形成を伴う気化現象を沸騰という。沸騰の起こる温度を沸点(または沸騰点。記号ではboiling pointの略でbp)という。1種類の物質だけからなる純粋液体では,一定圧力下における沸点は,その液体に固有な温度である。例えば水H2Oの沸点は1atmのとき,100.00℃であり,これは国際的な温度目盛を決めるのに使われている。通常,ことわりなしに沸点といえば,圧力1atmのもとでのものである。外圧を大きくすると沸点は上昇し,外圧が下がると沸点も下がる。前者のよい例は圧力釜であり,圧力をかけることによって調理温度を上げることができる。後者の例としては,高い山の上では,水がふつうよりも低い温度で沸騰するので米などをうまくたくことができないという現象があげられる。純粋液体では,圧力が一定であれば沸騰中の温度は一定に保たれるが,溶液の場合は気化の結果として濃度が変化するのに応じて沸点が移動する。溶媒の沸点は,不揮発性の溶質を溶かすと上昇するが,この現象を沸点上昇という。沸点上昇は,同じ溶媒の希薄溶液では,溶質の種類によらず同じモル濃度に対しては同一である。溶媒1kgに1molの溶質を溶かしたときの沸点上昇を,沸点のモル上昇と呼ぶ。

 沸騰は,器壁の微小なくぼみ,または液体中のごみなどに付着した空気が解放されて泡となり,その内部に液体が気化していって,その圧力が外気圧に等しくなったときに始まると考えられている。泡の存在をできるだけなくすると,沸点以上の温度でも沸騰しないことがある。この現象は沸騰の遅れと呼ばれ,このような状態を過熱状態という。過熱状態の液体は突然爆発的に沸騰することがあり,この現象を突沸という。沸騰の型としては,おもなものは器壁の高温面で液体が直接蒸気になって気泡ができる核沸騰と,高温面で蒸気が連続な薄膜を形成する膜沸騰の二つがある。膜沸騰の場合は,蒸気の膜が熱の伝達を妨げるので,核沸騰の場合に比べ熱の伝わる速度は小さい。
伝熱
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普及版 字通 「沸騰」の読み・字形・画数・意味

【沸騰】ふつとう

わきあがる。〔詩、小雅、十月之交〕(えふえふ)たる震電 (やす)からず、令(よ)からず 百川沸し 山冢(さんちょう)(さいほう)す

字通「沸」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「沸騰」の意味・わかりやすい解説

沸騰【ふっとう】

一定圧力のもとで液体をある温度(沸点)以上に熱したとき,または一定温度のもとでその液体の飽和蒸気圧以下に減圧したとき,液体の表面からだけでなく内部からも気化が起こって蒸気が泡となって発生する現象。これは器壁の傷や液中のちりに付着した微小な空気粒中に液体が気化し,その圧力が外圧をこえたとき沸騰が始まると考えられている。→突沸
→関連項目蒸発

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「沸騰」の意味・わかりやすい解説

沸騰
ふっとう
boiling

液体が表面だけでなく内部からも激しく気化して気体 (蒸気) となる現象。一定の圧力のもとで純粋な液体を加熱するとき,沸騰が続く間は温度が一定に保たれる。この温度を沸騰点または沸点という。沸騰は液体内部に生じた微小な気泡内の蒸気圧が外圧をこえたときに起る。したがって,沸点はその温度での飽和蒸気圧が外圧に等しくなる温度であり,外圧の強さによって異なるが,圧力が定まれば物質に固有な値となる。溶液の沸点は溶媒の沸点よりも高く,沸点の上昇温度は同じ溶媒の希薄溶液では溶質の種類に関係なくモル濃度に比例する。これを利用して溶質の分子量を測定する方法を沸点法という。内面が平滑な容器に入れた液体を静かに熱すると,沸騰のきっかけとなる泡が存在しないので,沸点以上の温度になっても沸騰しないで過熱された液体となる。

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化学辞典 第2版 「沸騰」の解説

沸騰
フットウ
boiling

液体の飽和蒸気圧が外圧より大きいとき,その液体の蒸気が液体内部で生じ,泡を発生し,液体表面から離散していく現象をいう.[別用語参照]沸点突沸

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世界大百科事典(旧版)内の沸騰の言及

【気化】より

…蒸発や昇華は液体や固体の表面からの気化であるが,液体の温度が上がり,圧力で決まる一定の温度(沸点)に達すると,液体の内部からの気化が起こる。これは沸騰と呼ばれる。気化は,一次相転移の一種で,温度一定の下で物質の密度が不連続に増す。…

※「沸騰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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