改訂新版 世界大百科事典 「ヨモギエダシャク」の意味・わかりやすい解説
ヨモギエダシャク (蓬枝尺)
Ascotis selenaria
鱗翅目シャクガ科の昆虫。翅の開張3.5~5cm。色彩は変化に富み,体翅とも灰色,灰黄色からかなり黒みがかった個体まである。前・後翅とも横脈上に環状の黒紋があり,外横線は鋸歯状。前翅裏面の翅頂部には黒褐色でかこまれた白紋がある。雄の触角は繊毛状だが,雌では糸状で毛が生えていない。ヨーロッパ南部からアフリカ,アジアのほとんど全域に分布し,日本では北海道から屋久島まで,全国的にごくふつうに見られる。幼虫は淡褐色から暗褐色,あるいは緑色のシャクトリムシで,第2腹節の瘤起(りゆうき)がとくに目だつ。きわめて広食性で,草木から樹木まで多くの植物に寄生するため,庭園や果樹の害虫として注目される。成虫は春から秋まで3~4回出現し,よく灯火に飛来する。秋に老熟した幼虫は,土中に入って蛹化(ようか)し越冬する。一般に本州以西のものは大型だが,北海道産は小型で淡色。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報