改訂新版 世界大百科事典 「ヨールカ」の意味・わかりやすい解説
ヨールカ
yolka
ロシアの祭りの一つ。ロシア語で〈小さなモミの木〉を意味するが,ロシアにおいては,切り出したモミの若木に豆電球や綿雪などで飾りつけをほどこし,そのまわりで年末と年始に主として子どものためにもよおす祭りをもヨールカと称する。1840年ころに西ヨーロッパからロシアに伝わったクリスマス・ツリーの風習の変形である。もともとロシアでは,キリスト降誕節(クリスマス)から主顕節までの約2週間をスビャートキSvyatkiと呼んで,教会でのさまざまな行事とは別に,新しい年の吉凶を占ったり農作物の豊穣を予祝したりする習慣があり,西欧風のツリーも都市を中心に容易に受け入れられた。ソビエト時代になってからは都市と農村を問わず,宗教的な色彩がまったく払拭(ふつしよく)された形で,それぞれの地域や家庭で,子どものための祝祭としてヨールカが立てられ,それを囲んで歌や踊りや遊戯が行われてきた。
執筆者:中村 喜和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報