日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーロッパ式農業」の意味・わかりやすい解説
ヨーロッパ式農業
よーろっぱしきのうぎょう
古代の地中海沿岸地方で行われていた二圃(にほ)式農業に起源をもつ、混合農業(自給的混合農業、商業的混合農業)、酪農、園芸農業、地中海式農業の4種5類型の農業方式。南北アメリカやオーストラリアなど、ヨーロッパ以外の地域にも分布している。年中適度な降水のあるアルプス山脈以北の地域では、中世から近代にかけて、二圃式農業が三圃式農業を経て混合農業へと発展し、さらに産業革命後の農産物需要の増大と新大陸からの安い小麦の流入を契機に、自給的混合農業、商業的混合農業、酪農、園芸農業へと分化・専門化した。また地中海沿岸地方では、二圃式農業から夏季乾燥する気候に適応した地中海式農業の発達をみた。いずれも耕種農業と家畜飼養が結合した有畜農業であること、土地利用は穀物類と飼料用作物との輪作を特色とすること、自給的混合農業地域を除き商品生産が盛んであること、地中海式農業地域の一部を除いて一般に中規模経営の自作農を主体とすること、労働生産性・土地生産性ともに高いことなどの点を特色としている。
[新井鎮久・井村博宣]