耕種と畜産を組み合わせた有畜複合農業(複合農業経営)で,西欧においてmixed farmingと総称されているものをいう。明治初期に駒場農学校の実習農場の中に西洋農法を行う〈泰西農場〉が設けられ混同農業といわれた。また,北海道では十勝畑作地帯などを中心として,畑作と酪農を組み合わせた混同経営が推奨され展開してきた。この畑作酪農は,近年の農業経営の規模拡大に伴う専門化,単一化傾向のなかで減少傾向もみられるが,畑作物の飼料化と厩肥(きゆうひ)の土地還元による地力の維持増進という経営複合化の利益を追求できる経営形態として,なお一定の存在意義をもっている。都府県では,いつのころからか混同農業ではなく混合農業が同じ意味の用語として一般的に使われている。混合農業すなわち有畜複合経営は西欧では現在でも一般的にみられるが,日本では,伝統的に米麦中心の無畜水田農業が支配的であり,有畜化の必要は何度も叫ばれてきたが,北海道を除いてあまり普及しなかった。しかし現在,専門化,単一化の弊害が出てきた反省として,農業経営の複合化の重要性が再認識されつつあり,その一形態としての混合農業の再構築も検討されている。
→有畜農業
執筆者:和田 照男
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作物を栽培する耕種農業と家畜飼養とが有機的に統合された農業経営の一形態。混同農業ともよばれる。中世のヨーロッパ北西部で成立した三圃(さんぽ)式農業にそのおもな起源が求められる。三圃式農業から過渡的穀草式農業を経て成立した近代的輪栽式農業が混合農業のもっとも典型的な形態である。したがって、場合によっては自給的性格の強いものも含まれるが、混合農業は基本的には高度の商業的農業を意味する。輪栽式農業によって代表される混合農業では、畑作の内部で穀類とマメ科作物、根菜類または牧草が一定周期で規則的に交代する輪作が行われ、家畜は輪作中の飼料作物を主体にして飼養され、穀類と畜産物が主要現金収入源となる。輪作体系と飼養家畜の種類には国や地方によって多様な形態があり、また経営規模の点からみても、混合農業には零細家族経営から企業的大経営に至るまでの幅広い経営形態が含まれる。混合農業の特質として、国民の食糧需要の高度化に対応した農業生産形態であること、輪作と畜産の結合によって地力が維持増強されること、労働力その他の生産要素が周年的に利用されること、などの点があげられる。今日では西ヨーロッパから東ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリア東岸、南部アフリカ、アルゼンチンのパンパ北東部などが世界のおもな混合農業地域である。日本では、北海道地方で混合農業がみられるが、それ以外の地方では耕種農業と畜産の結び付きが弱い。最近の畜産の拡大も購入飼料依存型畜産が主体となっているが、今後の農業の健全な安定した発展の方向としては、田畑輪換と結び付いた土地利用型畜産の展開、いいかえると混合農業の方向が期待されている。
[長 憲次]
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