日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラムズフェルド」の意味・わかりやすい解説
ラムズフェルド
らむずふぇるど
Donald Rumsfeld
(1932―2021)
アメリカの政治家。シカゴ生まれ。1954年プリンストン大学卒業後、アメリカ海軍のパイロットになる。1962年に30歳で共和党から連邦下院議員に当選。1969年、4期目のなかばで議員を辞任、ニクソン大統領の補佐官を務めた。1974年にはフォード政権での首席大統領補佐官を務め、翌1975年、43歳で史上最年少の国防長官に就任した。1977年に退任後、製薬会社などの経営に携わるかたわら、レーガン政権の政府顧問などとして数々の公職を務めた。1988年の大統領選挙で共和党の候補者指名を模索したこともある。1998年には、北朝鮮やイラン、イラクの弾道ミサイルの脅威を警告する報告書を発表し、ミサイル防衛構想の推進を説いた。2001年、ブッシュ政権で国防長官に再起用された。スピードと効率重視の軍改革を進めるが、タカ派で一国主義的志向が強く、イラクの大量破壊兵器問題では「湾岸戦争以降なんら有効な解決策を示せなかった」と国連を手厳しく批判。アメリカ単独での武力行使に、政権内でもっとも積極的な姿勢をとった。また、2003年3月、アメリカがイラクに対する武力行使を遂行したことに反対したフランスやドイツを「古い欧州」と言い放つなど、威圧的な言動でしばしば他国の反発を招いている。2006年11月の中間選挙でブッシュ政権のイラク政策が批判を受けて共和党が敗北したのを機に国防長官を辞任した。
[尾関航也]
『ジェフリー・A・クレイムズ著、前田和男訳『ラムズフェルド 百戦錬磨のリーダーシップ』(2003・ベストセラーズ)』