改訂新版 世界大百科事典 「ランデル」の意味・わかりやすい解説
ランデル
Max Linder
生没年:1883-1925
サイレント時代のフランスの喜劇俳優。日本ではマックス・ランデの表記で知られてきた。演劇学校を卒業し,パリで舞台に立っていたが,1905年映画界入り。10年に〈マックス〉という主人公をつくり出した。それまでの喜劇の主人公は,サーカスの道化役のように,誇張され,扮装だけで笑いをさそう,みるからに滑稽なものであったが,ランデルはまったくふつうの人間の扮装,すなわち黒の礼服,シルクハット,エナメルの靴に白い手袋をはめ,ステッキを持った,一分のすきもない紳士のスタイルで〈道化〉を演じたところにそのユニークさがあった。体を張ったドタバタ喜劇ではなく,軽妙なパントマイムでフランスのみならず世界中で人気を博した。脚本,演出,製作も手がける大活躍で,毎週1本のわりで短編を製作し続け,第1次世界大戦まで世界最大の喜劇映画スターの名をほしいままにした。
若き日のチャップリンは〈マックス〉の紳士スタイルをヒントにみずからの扮装をくふうしたと語っており,アメリカのサイレント喜劇の父,マック・セネットも,その名を〈マックス〉からとったといわれる。しかしランデルは第1次大戦に従軍して負傷。その後はチャップリンの成功に圧倒され,25年,妻とともに原因不明の自殺をとげた。
執筆者:岡田 英美子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報