礼服(読み)レイフク

デジタル大辞泉 「礼服」の意味・読み・例文・類語

れい‐ふく【礼服】

冠婚葬祭その他、儀式のときに着る衣服。⇔平服
[類語]晴れ着洋服和服ころも衣料品衣料衣服衣類着物着衣被服装束お召物衣装ドレス洋品アパレル略服ふだん着略装軽装着流しカジュアルよそゆき一張羅街着式服フォーマルウエア礼装正装既製服レディーメード既製出来合い吊るしプレタポルテ注文服オーダーメード私服官服制服ユニホーム学生服軍服燕尾服喪服セーラー服水兵服背広スーツ

らい‐ふく【礼服】

即位礼・大嘗会だいじょうえ元日の節会せちえなどの大儀に着用した礼装。大宝の衣服令により、の制に倣い制定。皇太子・皇族、五位以上の諸臣内命婦ないみょうぶが着用し、位階により区別があった。

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精選版 日本国語大辞典 「礼服」の意味・読み・例文・類語

らい‐ふく【礼服】

  1. 〘 名詞 〙 即位、朝賀などの大礼に参列の諸官が着用する服装。その具には玉冠、大袖、小袖、単、表袴、大口袴、裳(も)、綬(じゅ)、玉佩(ぎょくはい)、笏(しゃく)、錦下沓(にしきしとうず)、烏皮(くりかわのくつ)などがある。天皇をはじめ五位以上の男女官人の着用したもの。
    1. [初出の実例]「親王及大納言已上始著礼服」(出典:続日本紀‐大宝二年(702)正月己巳)

れい‐ふく【礼服】

  1. 〘 名詞 〙 儀式の時に着用する特別な衣服。
    1. [初出の実例]「周公の礼服は結構なれども猨狙はみごととも思はず」(出典:清原国賢書写本荘子抄(1530)五)
    2. [その他の文献]〔戦国策‐趙策・武霊王〕

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改訂新版 世界大百科事典 「礼服」の意味・わかりやすい解説

礼服 (らいふく)

古代の大宝衣服令で初めて制定された衣服の体系だが,冠位十二階以来の位冠や,衣服形態の系統を引く。衣服令の規定には,礼服,朝服制服の,三つの体系がある。うち礼服は,大祀,大嘗(だいじよう),元日などの重要な国家的儀式行事の際に,五位以上の者が着用すべき衣服として規定された。養老衣服令では皇太子,親王,内親王,諸王,女王および文官,武官,内外命婦(みようぶ)について規定がある。令には天皇の衣服規定そのものは存しないが,臣下が礼服を着用する儀式の際には,天皇は冕服(べんぷく)と称する,上衣下裳形式の衣服を着用して儀式に臨んだらしい。《西宮記》によれば天皇冕服は,赤の上衣(女帝の場合は白)に日,月,星辰,山,竜,華虫(雉子きじ)),宗彝そうい)(酒器),の7章が,下衣の(ひらみ)には藻,火,粉米(ふんべい)(白米),黼(斧),黻(ふつ)(己形の相そむく形)の5章が五彩の糸で刺繡(ししゆう)されている。これを袞冕(こんべん)十二章と称し,頭には十二旒(りゆう)の白玉を垂下させた冕冠をかぶった。732年(天平4)正月,即位後の聖武天皇が初めて冕服を着用して受朝したとある。

 皇太子以下,文官五位以上の礼服は,品・位階を可視的に表示する礼服冠と,位階に対応した色の上衣(養老令では皇太子は黄丹,親王および諸王・諸臣一位は深紫衣,五位以上諸王および三位以上諸臣は浅紫衣,以下四位深緋衣,五位浅緋衣)に牙笏(げしやく)を持ち,白袴の上に皇太子は深紫の紗の褶,親王,諸王は深緑,諸臣は深縹の紗の褶を着ける。他に三位以上は綬(じゆ)・玉佩(ぎよくはい)を,五位以上は綬のみをつけ,錦のしとうず)烏皮舃(くりかわくつ)をはいた。内親王,女王,内外命婦五位以上の礼服は,品・位階によって異なる。金玉で飾った宝髻ほうけい)をつけ,朝服と同色の衣に,内親王は蘇方と深紫,浅紫,深緑,浅緑の5色で絞染を施した裙(女王,内命婦二位以下は深紫を除いた4色)をまとい,裾から褶(内親王,女王は浅緑褶,内命婦は浅縹褶)をのぞかせた。また紕帯(内命婦三位以上は蘇方と深紫,四位は浅紫と深緑,五位は浅紫と浅緑)をつけ,錦の襪と,金銀で飾った緑舃(四位以下は銀飾の烏舃(くろくつ))をはいた。

 武官の礼服は,五位以上相当官の衛府の督佐について規定された。皁(くり)の羅の冠に緌(おいかけ)(冠のひも)を施し,牙の笏を持して,位階に準じた色の襖(あお)を着,その上に裲襠(りようとう)を加えた。下半身には下袴を着,烏皮(くりかわ)(兵衛督は赤皮)の靴をはき,上に錦の行縢(むかばき)をつけた。また金銀で飾った腰帯と横刀を加える。

 礼服は,唐制の中に比定しうるものを探すとすれば,上衣下裳形式で,陪祭,朝享,拝表などの大事に着用する〈朝服〉に擬しうる。しかし礼服は唐の服制をそのまま踏襲したものとみるよりは,礼服冠や褶の来歴を勘案すると,冠位十二階以来の,日本固有の衣服制の系統を引いたものと考えられる。なお,五位以上が礼服を着用すべき儀式の際に,五位以下の者は朝服を着用して臨んだが,大宝令段階では文官男子のそれは,〈脛裳(はぎも)〉と称する,おそらくは裳形式の下衣をまとうものであった。礼服の製作は当初製衣冠司で行われ,支給されたらしいが,741年には着用者が私的に備え作るべきものとされ,823年(弘仁14)には礼服を準備できずに,朝賀の礼そのものに出席できない人も多いとして,凶年の間は礼服の着用を停止する詔が出されている。
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礼服 (れいふく)

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百科事典マイペディア 「礼服」の意味・わかりやすい解説

礼服【れいふく】

冠婚葬祭その他の儀式の際着用する衣服。大宝令で礼服(らいふく),朝服,制服の制が定められ,礼服が最高の礼装とされたが,平安時代になると朝服から発達した束帯がこれにかわり,女性では十二単(じゅうにひとえ)が用いられた。時代が下るに従って衣冠直衣(のうし),狩衣(かりぎぬ),直垂(ひたたれ),大紋素襖(すおう)なども礼服として用いられ,江戸時代には(かみしも),女性では打掛が用いられた。明治以後は洋装がとり入れられ,現在では男性は和服の場合,紋付・羽織・袴(はかま),洋服の場合,燕尾服モーニングコートタキシードなど,女性は和服の場合,留袖振袖訪問着など,洋服の場合,イブニングドレスディナー・ドレスカクテルドレスアフタヌーンドレスなどを用いる。
→関連項目王冠制服

礼服【らいふく】

装束の一種。大宝令によって定められた公家の礼服(れいふく)。即位,大嘗祭(だいじょうさい),元日朝賀等の重要な儀式に着用された。文官,武官,女官の別があり,さらに天皇は冕冠(べんかん)という特殊な冠,赤地に竜文の衣,皇太子は黄丹(おうに)の衣と定められていた。文官の礼服は礼冠(らいかん),衣(大袖と小袖),褶(ひらみ),白袴(しろのはかま),絛帯(くみのおび),綬(じゅ),玉佩(ぎょくはい),牙(げ)の笏(しゃく),襪(しとうず),【せきのくつ】からなり,武官の礼服は礼冠,位襖(いおう),裲襠(りょうとう),白袴,行縢(むかばき),大刀(たち),腰帯,靴(かのくつ)からなる。女官の礼服は宝髻(ほうけい),衣,紕帯(そえのおび),褶および裙(うわも),錦の襪,【せきのくつ】,その他天平時代に入っては背子,領巾(ひれ)等も用いられた。→朝服
→関連項目大袖裲襠礼服

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「礼服」の意味・わかりやすい解説

礼服(らいふく)
らいふく

古代以来、朝廷で用いられた服装の一種。大宝(たいほう)の衣服令(りょう)で、朝服に加えて礼服を制定したと思われ、『続日本紀(しょくにほんぎ)』大宝2年(702)正月己巳朔(つちのとみついたち)条に親王、大納言(だいなごん)以上が初めて礼服を着たと記している。天皇の礼服についての規定はないが、天平(てんぴょう)4年(732)正月乙巳(きのとみ)朔条に、天皇が初めて冕服(べんぷく)(天皇の礼服)を着用したとある。養老(ようろう)の衣服令で、五位以上の者が大祀(だいし)、大嘗(だいじょう)、元日の儀式に際して着装するものとし、皇太子、親王、諸王、諸臣の文官および武官、内親王、女王、内命婦(ないみょうぶ)の礼服について規定している。皇太子以下諸臣文官の礼服の構成は、礼服冠(かん)、衣(きぬ)、牙笏(げのこつ)、白袴(しろはかま)、紗褶(しゃのひらみ)、絛帯(くみのおび)、錦襪(にしきしとうず)、烏皮舃(くりかわのせきのくつ)とし、位階によって衣の色を区別している。親王と諸王の五位以上は綬(じゅ)を帯び、三位(さんみ)以上は玉珮(ごくはい)という玉と銀の垂飾(すいしょく)を腰から下げる。

 女帝や皇后の礼服についての規定もみられないが、内親王以下の者の構成は宝髻(ほうけい)(飾りをつけた髪形)、衣、紕帯(そえのおび)(縁のついた帯)、褶、纈裙(ゆはたのも)、錦襪、舃である。また、武官の礼服の構成は、皀羅(くろらの)冠、皀緌(くろのおいかけ)、牙笏、位襖(いおう)(両腋(わき)を縫わずにあけた上着)、裲襠(りょうとう)、腰帯(ようたい)、横刀(たち)、白袴、烏皮靴(くつ)、錦行縢(むかばき)(股(もも)と脛(すね)を覆うもの)である。平安時代以降、礼服は三位以上の者のみが即位式に着装するものとし、江戸時代末期まで続いた。

[高田倭男]


礼服(れいふく)
れいふく

礼装

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旺文社日本史事典 三訂版 「礼服」の解説

礼服
らいふく

令(衣服令)で定められた,五位以上の男女文武官が,大儀(即位・大嘗祭 (だいじようさい) ・元日など)のときに着用する式服
中国王朝の朝服を継承。文官は,冠・衣・笏 (しやく) ・袴 (はかま) ・帯・褶 (ひらみ) (裳の一種)・襪 (しとうず) (足袋の一種)・舄 (せきのくつ) で,衣の色や綬 (じゆ) などで位階の上下を区別した。武官は冠に緌 (おいかけ) をつけ,衣のかわりに位襖 (いおう) (襖はすそのない衣)で金銀装の横刀をつけるなどした。平安時代以後も,江戸末期の孝明天皇のときまで即位の際に使用された。

礼服
れいふく

らいふく

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「礼服」の意味・わかりやすい解説

礼服
れいふく

冠婚葬祭の儀式典礼の際に用いる服装。これを身に着けることを礼装という。儀式の軽重,公私の別,着用者の身分や階級により多くの種類があるが,もともと人為的な儀式に伴うもので,他の衣服に比べて作為的なものが多く,一定の型をもつのが普通である。 (→晴れ着 , 喪服 )  

礼服
らいふく

古代日本で男女が宮中儀式に用いた装束。身分としては五位以上の官吏が用いた。その起源は大宝令の衣服令によって規定されていたが,もともとは中国の唐制模倣によるものである。天皇,皇太子をはじめ臣下では位階によって冠も衣服も服色を異にし,女子,武官の場合も同様であった。平安時代から礼服は即位式のみのものとなり,19世紀の孝明天皇の時世まで用いられ,のち廃止された。

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普及版 字通 「礼服」の読み・字形・画数・意味

【礼服】れいふく

礼装。

字通「礼」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の礼服の言及

【礼装】より

…一般に冠婚葬祭の儀式典礼に際してのよそおいをいい,着用する衣服のことを礼服という。現今では洋装の場合フォーマル・ウェアformal wearともいう。…

【色】より

…もちろん,それ以前に,草木染を中心に具体的で雑多な色が日本列島先住民たちによって作られ用いられてきたことも確かであるが,色をどう観念するか,なんの色を尊きもの好ましきものと感ずるか,という問題が最初に日本人の意識にのぼったのは,律令受容に伴う中国の制度文化の咀嚼(そしやく)=消化の段階においてである。律令の〈衣服令(えぶくりよう)〉をみると,〈礼服(らいぶく)〉(大祀・大嘗・元日に着る儀式用の服),〈朝服(じようぶく)〉(朝廷で着る公事(くじ)用の服),〈制服(せいぶく)〉(無位の官人・庶人の着る服)が厳格に規定され,位階や身分の上下に従って使用する色が異なっていたのを知る。表の〈古代服色表〉は《日本書紀》《続日本紀(しよくにほんぎ)》所載記事をも併せ参考にしながら,4回の服色規定が一目瞭然にわかるようにしたものだが,これによって,紫が最高の位階を示し,以下,赤,緑,藍(青)の順になっていたことを知る。…

【祭服】より

…祭祀(さいし)に用いられる服装。式服,礼服ともいう。
[神道の祭服]
 大きく皇室祭祀の服装と一般神社の神職用の服装とに分けられる。…

※「礼服」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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