改訂新版 世界大百科事典 「リクゼンイルカ」の意味・わかりやすい解説
リクゼンイルカ (陸前海豚)
ハクジラ亜目ネズミイルカ科の哺乳類。イシイルカPhocoenoides dalli(英名Dall's porpoise)の体色変異の一つ。体側の白斑が胸びれに達する個体の呼称で,リクゼンイルカ型truei-type(英名True's porpoise)ともいう。これに対して,白斑が背びれの下で終わっている型をイシイルカ型dalli-typeと呼ぶ。両型を別亜種とした場合もあるが,体色以外には違いがないので,同種内の変異とされている。イシイルカは体長2.3m,体重200kgでずんぐりして,背びれは低い。直径1mm程度の小さい歯をもつ。北太平洋の寒流域に数頭の群れで生活し,ハダカイワシやイカなどを食べる。活発に泳ぎ,船首波に乗る。妊娠期間11ヵ月で,夏に体長1mほどの子を1頭生む。子は1年以内に離乳,3~4年で成熟し,ほぼ毎年繁殖する。最高寿命はおそらく15~20年。リクゼンイルカ型は,日本の太平洋沿岸に多く,この系統は銚子~青森方向の太平洋沿岸で越冬し,夏にはオホーツク海中部で繁殖する。これに対して,山口県以北の日本海で越冬する個体はすべてイシイルカ型で,夏にはオホーツク海南部で繁殖する。生息頭数は両資源ともそれぞれ約20万頭といわれ,年間各7000~8000頭が突きん棒漁業で捕獲されている。このほか,北太平洋沖合から北アメリカ沿岸にかけても,別のイシイルカ型の系群がいくつか分布している。北洋と日本海のサケ・マス流し網でもイシイルカ型が混獲されたことがある。
執筆者:粕谷 俊雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報