日本大百科全書(ニッポニカ) 「リピドーシス」の意味・わかりやすい解説
リピドーシス
りぴどーしす
lipidosis
遺伝子異常による脂質蓄積症をいうが、普通はとくにスフィンゴリピドの蓄積症をさす。スフィンゴリピドとは、スフィンゴシンあるいはそれに類似した長鎖アミノアルコールをもつ脂質(リピド)であり、スフィンゴミエリン、セレブロシド、ガングリオシドなどを含み、グリセリンを含む複合脂質(グリセロフォスフォリピド)に対する用語である。
スフィンゴリピドは細胞質内のリソゾームにある加水分解酵素によって分解されるが、遺伝子異常によってこの酵素の一つが先天的に欠損すると、リソゾーム内に蓄積される。とくに、ガングリオシドは中枢神経系に多く存在しており、その蓄積症はガングリオシドーシスとよばれる。大部分は乳幼児期に発病し、脳変性疾患の症状を示す。患者の血液や尿を用いて欠損酵素を確認することにより確定診断が行われる。特異的治療法はなく、つねに進行性の経過をとり、予後は不良である。なお、羊水検査によって出生前診断も行われている。
[山口規容子]