日本大百科全書(ニッポニカ) 「スフィンゴミエリン」の意味・わかりやすい解説
スフィンゴミエリン
すふぃんごみえりん
sphingomyelin
リン脂質の一種で、スフィンゴシン(炭素数18のアミノアルコール)のアミノ基に脂肪酸が酸アミド結合し、ヒドロキシ基にリン酸が、このリン酸にさらにコリンがエステル結合した化合物である。神経のミエリン鞘(しょう)に多量に存在することからスフィンゴミエリンとよばれるが、脳や肝臓などの生体膜にもみいだされる。植物や細菌には認められていない。遺伝病でスフィンゴミエリンの分解酵素が欠失すると神経機能の低下をきたす。セレブロシド、ガングリオシドなどの脳に含まれる糖脂質と共存し、アルコール可溶、アセトンやエーテルに不溶、水とはコロイドをつくる点で共通する。通常のリン脂質と異なって、グリセリンを含まない点が特徴である。
[若木高善]
『日本生化学会編『新 生化学実験講座4 脂質(2)リン脂質』(1991・東京化学同人)』▽『五十嵐靖之ほか編『マイクロドメイン形成と細胞のシグナリング――スフィンゴ脂質の新しい生物機能』(2003・共立出版)』