脂質(読み)シシツ

デジタル大辞泉 「脂質」の意味・読み・例文・類語

し‐しつ【脂質】

生体の構成成分の一つ。脂肪ろうなどの単純脂質燐脂質りんししつ糖脂質などの複合脂質、およびステロイドカロテノイドなどと性質や構造の似た物質の総称。水に溶けにくく、有機溶媒には溶けやすい。リピド。
[類語]栄養滋養養分人工栄養栄養分栄養素栄養価炭水化物含水炭素糖質糖類澱粉蛋白質アミノ酸ゼラチンコラーゲン脂肪・脂肪分・ビタミンミネラル灰分無機質食物繊維

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精選版 日本国語大辞典 「脂質」の意味・読み・例文・類語

し‐しつ【脂質】

  1. 〘 名詞 〙 炭水化物・蛋白質・核酸とともに生体を構成する重要な物質群で、脂肪・ろう、およびこれと性質、構造の似た物質の総称。脂肪酸とアルコールやグリセリンのエステルからなる単純脂質(脂肪・ろうなど)、燐脂質・糖脂質などの複合脂質、以上二つの物質が加水分解して生じる誘導脂質(ステロール・脂溶性ビタミンなど)に分けられる。リポイド。リピド。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「脂質」の意味・わかりやすい解説

脂質
ししつ

水に不溶でエーテル、クロロホルムなどの有機溶媒に溶ける生体成分の総称。構造的に多種類の成分が含まれる。単純脂質と複合脂質に大別され、前者には脂肪、脂肪酸、ステロイドなどが、後者にはリン脂質、糖脂質、リポタンパク質などがある。

 食品分析表では脂質、栄養調査では脂肪というように、脂質と脂肪は食品、栄養の分野ではしばしば同義語として用いられる。食品中の脂質のほとんどは脂肪であるからである。トリグリセリド(中性脂肪、あるいは単に脂肪)はグリセリンに脂肪酸3分子がエステル結合したもので、食用油脂や動物の貯蔵脂肪のほとんどすべてはトリグリセリドである。脂肪酸はすべての脂質の構成成分であり、自然界では遊離型はきわめて少ない。動物の貯蔵脂肪がエネルギー源として利用される際に、アルブミンと結合した遊離脂肪酸として血液を介して各組織へ運ばれる。ステロイドとしては、動物では量的にはコレステロールが主成分で、少量ながらすべての組織の膜構築素材としておもに遊離型で存在する。血清中ではエステル型が多い。そのほか、各種のステロイドホルモンや胆汁酸がある。リン脂質は種々の成分からなるが、グリセリンに脂肪酸2分子とリン酸化された塩基成分1分子が結合した構造のものがもっとも多く、レシチン、ケファリン(セファリン)が代表的である。臓器、脳、神経組織はトリグリセリドよりもリン脂質を多く含んでいる。卵類にも多い。レシチンは乳化性に優れ、食品や医療用に使われる。スフィンゴ脂質は脳、神経組織に多いリン脂質である。イノシトールを含むものもある。糖脂質は動物体内では一般にガラクトースを含んでおり、脳の主要な脂質成分である。

 通常の食用油脂の消化吸収率は95%以上にも及ぶ。脂肪は小腸内で膵臓(すいぞう)リパーゼの作用を受け、大部分はモノグリセリドと脂肪酸となって胆汁酸ミセルに溶解し吸収される。吸収後、小腸粘膜細胞内でトリグリセリドに再合成され、カイロミクロンとしてリンパを経由して血液循環系へ入り、リポタンパク質リパーゼにより加水分解され、脂肪酸の形で主として末梢(まっしょう)組織に取り込まれる。炭素数8、10の中鎖脂肪酸からなるトリグリセリドは膵臓リパーゼや胆汁酸の分泌不良の場合にもよく吸収され、脂肪酸として門脈へ入り直接肝臓へ運ばれるので、よいエネルギー源となる。脂肪は胃内滞留時間が長く、腹もちがよい。

 脂肪は糖質やタンパク質に比べて特異動的作用(食物を摂取したときに代謝量が増加すること。食事をとって身体が暖まるのはこの効果による)が低く、エネルギー効率が高い(1グラム当り9キロカロリー)。したがって重労働や強い運動時の高エネルギー食にはなくてはならない栄養素である。エネルギー源としては各種油脂の効率にはほとんど差はないとみなしうる。脂肪は動物体内では脂肪組織として皮下、性腺(せいせん)、腎(じん)周辺、腸間膜などに貯蔵され、エネルギー銀行の役割を果たしている。脂肪は必須(ひっす)脂肪酸の供給源、種々の脂溶性ビタミン(A、D、Eなど)の担体として重要である。食物の風味とも関係している。日本人は現在1日1人当り60グラム近くの脂肪を摂取しており、エネルギー比で約26~27%に相当し、脂質所要量の上限値を超えている。植物性および動物性の脂肪をバランスよく摂取することが大切である。脂肪摂取量の増加は種々の癌(がん)発生率を高める原因となるとして注目を集めているが、魚油などに含まれるn-3系多価不飽和脂肪酸は抑制的に働くようである。

 食品中では、食用油脂でもっとも脂質含量が高く、トリグリセリドとして95~98%にも達する。バター、マーガリンも80%程度含む。マヨネーズ、ドレッシング、種実類、豚肉、チーズ、即席麺(めん)、ポテトチップスなども脂質に富む食品である。ハム、ソーセージ、牛肉、大豆製品などにも比較的多い。同じ食品でも脂質含量に大きな幅がある(牛肉では1.5~30%)。魚類では一般に天然物より養殖物で多い。脂質を多く供給する食品は油脂類と肉類で、全体の50%近くを占め、魚介類、卵類、豆類、穀類、乳類がこれに次ぐ。

[菅野道廣]

『舟橋三郎・原一郎・山川民夫編『脂質』1~2(1972、1973・共立出版)』『山本清著『ホルモンと脂質の代謝』(1982・共立出版)』『中村治雄著『脂質の科学』(1990・朝倉書店)』『五島雄一郎編『わかりやすい脂質代謝とその異常』(1991・日本アクセル・シュプリンガー出版)』『日本化学会編『脂質の化学と生化学』(1992・学会出版センター)』『佐藤清隆・小林雅通著『脂質の構造とダイナミックス』(1992・共立出版)』『小川和朗ほか編『脂質とステロイド――組織細胞化学の技術』(1993・朝倉書店)』『板倉弘重著『脂質の科学』(1999・朝倉書店)』『P・リッター著、須藤和夫ほか訳『リッター生化学』(1999・東京化学同人)』『荻三男著『臨床化学――要点』(2000・近代出版)』『鈴木信著『データでみる百歳の科学』(2000・大修館書店)』『板倉弘重ほか著『脂質研究の最新情報 適正摂取を考える』(2000・第一出版)』『日本生化学会編『基礎生化学実験法第5巻 脂質・糖質・複合糖質』(2000・東京化学同人)』『川嵜敏祐・井上圭三・日本生化学会編『糖と脂質の生物学』(2001・共立出版)』『鈴木修・佐藤清隆著『機能性脂質の新展開』(2001・シーエムシー)』『日本油化学会編『油化学便覧 脂質・界面活性剤』(2001・丸善)』『渋谷勲著『生体膜脂質の機能を追って――その分子生物学を拓く』(2002・学会出版センター)』『宮川高明著『脂質ときがたり』(2002・幸書房)』『尾崎由基男著『血小板と生理活性物質』(2002・金芳堂)』『奥山治美・安藤進編『脳の働きと脂質』』『奥山治美・菊川清見編『脂質栄養と脂質過酸化――生体内脂質過酸化は傷害か防御か』』『奥山治美・小林哲幸編『油脂とアレルギー』』『高田秀穂・浜崎智仁編『脂質と癌』』『柳沢厚生・浜崎智仁編『心臓・脳血管の動脈硬化と脂質栄養』(以上、2003・学会センター関西)』

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改訂新版 世界大百科事典 「脂質」の意味・わかりやすい解説

脂質 (ししつ)
lipid

脂質はタンパク質,糖質,核酸とならんで生体の主要構成成分の一つである。後3者は定義しやすいのに対し,脂質は必ずしも特定の化学構造に基づいて命名されたわけではないので簡単に定義づけることが難しい。1925年,ブルーアW.R.Bloorは,(1)水に不溶で,エーテル,アルコール,クロロホルム,ベンゼンのような有機溶媒に易溶な物質で,(2)高級脂肪酸などを含み,それとなんらかの化学結合をしたもの,または結合を作りうる物質で,(3)生物体により利用されうるものと定義づけた。しかし,この定義には当てはまらないが脂質に含められている化合物も多い。したがって現状では,〈脂質とは有機溶媒には易溶で水には溶けず,分子中に鎖状または環状の炭化水素基をもち,かつ生物体に存在するかまたは生物体に由来する天然物質をいう〉と漠然と定義することがよいと思われる。脂質は以下の重要な生体機能と深くかかわっている。(1)生体膜の構成成分として。(2)代謝エネルギーの貯蔵ならびに輸送型として。(3)多くの生物の表面での保護層として。(4)ある種のビタミン,ホルモンなどの形で生物活性の調節因子として。(5)細胞認識,組織免疫,種特異性などを決定する細胞表面成分として。

脂質の分類はさまざま試みられているが,ここでは古くから行われている分類を挙げておく。(1)単純脂質simple lipid 脂肪酸とアルコールのエステル。これには脂肪,蠟,ステロールエステルなどが含まれる。(2)複合脂質complex lipid 脂肪酸とアルコールのほかに,リン,硫黄,窒素塩基,あるいは糖などを含むエステルで,リン脂質糖脂質が含まれる。(3)誘導脂質derived lipid 以上の物質が加水分解して生じるもの。脂肪酸,ステロール類,その他の高級アルコール,アルデヒドなどが含まれる。

 このほか,極性基の有無などによる分類もなされている。以下に代表的な脂質について述べる。

脂質の構築単位として多量に存在する。その種類は多く100種以上のものが分離されている。天然には遊離状態のものは少なく水酸基とエステル結合をなすか,アミノ酸とアミド結合をしている。脂肪酸はその炭化水素鎖の長さと不飽和結合の数と位置で区別される。天然に最も豊富に存在するものは,直鎖の偶数個炭素原子を含む飽和または不飽和のモノカルボン酸で,パルミチン酸(C16),ステアリン酸(C18),オレイン酸(C18)である(図1)。脂肪酸のアルカリ塩はいわゆるセッケンで,水溶液中ではミセルを作る。哺乳類は飽和脂肪酸と一不飽和脂肪酸を合成することはできるが,その他の不飽和脂肪酸は植物から食餌としてとらなければならず,これは必須脂肪酸と呼ばれる。
脂肪酸

脂肪は3価アルコールであるグリセリンと脂肪酸とのエステルで,エステル結合をする脂肪酸の数が1個であるものをモノグリセリド(モノアシルグリセロール),2個のものをジグリセリドジアシルグリセロール),3個のものをトリグリセリド(トリアシルグリセロール)と呼ぶ(図2)。トリグリセリドはその中で最も多く,植物・動物細胞で最も豊富に存在する脂質である。効率のよいエネルギー源の貯蔵の役を担う貯蔵脂質の主要成分である。また保温や外からの衝撃を防ぐ役もしている。天然の脂肪は,その構成脂肪酸の側鎖の長さ,不飽和度の異なるひじょうに多種のグリセリドの混合物であり,融点も異なっている。常温で液体のものを油という。
脂肪

高級脂肪酸と高級アルコールからなる固形エステル。アルコールは高級アルキルアルコールかまたはステロール(ステロイドアルコール)である。蜜蠟は前者の例でCが26~34のアルコールのパルミチン酸エステルからなる。ラノリン(羊毛脂,羊毛蠟ともいう)の主成分はラノステロールと脂肪酸のエステルで,後者の例である。空気中でも変化しにくく,動物の皮膚,毛皮,羽毛,植物の葉や果実に,また多くの昆虫の外骨格の保護膜として見いだされる。

複合脂質の中で最も重要で,かつ多量に存在する。生体膜の主要脂質成分であり,膜以外に存在することはまれである。グリセリンの3位の水酸基がリン酸とエステル結合し,残りの二つの水酸基に脂肪酸がエステル結合している(図3)。リン酸基に結合した水溶成分が含窒素アルコールのものとポリアルコールのものがある。非極性炭化水素と極性のリン酸基部分をもつので極性脂質であり,極性の頭の部分の形,電荷は種類によって異なる。1位に飽和,2位に不飽和の脂肪酸をもつことが多い。この両極性のために水溶液中では親水性基で水と接するミセルをとり,水中で脂質二重層を作らせることができる。高等植物や動物に最も多いグリセロリン脂質は,ホスファチジルエタノールアミンとホスファチジルコリンで,膜の主成分である。ほかにホスファチジルセリン,ホスファチジルイノシトール,ホスファチジルグリセロール,カルジオリピンなどがある。リン脂質は特異的な種類のリパーゼにより加水分解される。

長鎖アミノアルコールであるスフィンゴシンかまたはその関連塩基を含む複合脂質で,植物・動物細胞の膜成分として重要である。神経組織に多く,脳にはスフィンゴミエリンが多量に存在する(図4)。

グリコシルジグリセリドともいう。糖はグルコースまたはガラクトースであることが多い(図5)。主として植物界と微生物界に見いだされる。

グリコシルセラミドともいう。最も簡単なものはセレブロシドで,セラミド(スフィンゴシンのアミノ基に脂肪酸がアミド結合した構造単位)の水酸基にβ-グリコシド結合した糖を含む(図6)。この脂質のある種のものは動物の細胞表面の重要成分であり,赤血球表面に存在する糖脂質が血液型特異性を担っている。さらに複雑なスフィンゴ糖脂質にガングリオシドがある。これは糖鎖の部分にシアル酸残基を含むより複雑な糖鎖構造をもっている(図6)。脳の灰白質に多く,神経伝達に関与することが予測されている。この種の糖脂質は臓器や組織の特異性を担い組織免疫に関与し,組織の発生と構築に重要な細胞認識機構との関係が注目されている。

分子内に硫酸またはスルホン酸を含む脂質で,前者を含むものをスルファチドsulfatide,後者を含むものをスルホノリピドsulfonolipidという。酸基は通常糖部分に結合している(図7)。したがって硫糖脂質と称すべきものが多い。グリセロ硫糖脂質,スフィンゴ硫糖脂質,アシルグリコシル硫酸エステル,アルキル硫酸エステルなどの種類がある。

シクロペンタノヒドロフェナントレン環(図8)をもつ物質群で,動植物界に遊離またはエステルとして広く分布している。各種ステロール,胆汁酸,ステロイドホルモンとしておのおの重要な生理的役割を担っている。
ステロイド

イソプレンの重合体とその誘導体をテルペンまたはテルペノイドと総称する。植物の芳香油成分やカロチノイド(植物の緑葉や根および動物の卵黄や黄体の色素)はこれにあたる。人体内では酸化されてビタミンAを生じる。
カロチノイド →テルペン
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化学辞典 第2版 「脂質」の解説

脂質
シシツ
lipid

リピドともいう.水に不溶で,非極性溶媒(クロロホルム,エーテル,ベンゼンなど)に可溶な細胞内有機物の総称である.化学構造上,比較的長い炭化水素鎖からなる非極性基と,エステル基,ヒドロキシ基,糖,リン酸基などの極性基との二つの部分から構成されている.膜の構成成分,代謝物の細胞内貯蔵,微生物,高等植物の細胞壁の保護などの生理機能があるが,脂質に分類されるある種のビタミンホルモンや,これらの前駆物質は,生理活性において重要である.脂質を大別すると,次のようになる.
(1)単純脂質(脂肪酸と各種アルコールとのエステル):グリセリド(グリセリンの脂肪酸エステルで,中性脂質,油脂ともよぶ),ろう(高級アルコールの脂肪酸エステルで,ステロール,ビタミンA,D,カロテノールの脂肪酸エステルなども含む).
(2)複合脂質(脂肪酸とアルコールのほかに,さらにリン酸,窒素原子団などの塩基,糖などを含む):グリセロリン脂質(グリセリンの脂肪酸エステルでさらにリン酸塩を有するもので,狭義のリン脂質はこのカテゴリーをさす),スフィンゴ糖脂質(長鎖状塩基であるスフィンゴシンと脂肪酸が酸アミド結合したものをセラミドとよぶが,これにリン酸,糖などが結合したもので,グリセロリン脂質に対応する一大脂質群である),糖脂質(糖を含む複合脂質のうち,リン酸を含まないものの総称で,グリセロ糖脂質か,スフィンゴ糖脂質のいずれかに分類される).
(3)誘導脂質(単純脂質や,複合脂質の水解産物のうち,水に不溶なもの):脂肪酸,ステロール(おもにコレステロール),スフィンゴシン,脂肪性アルコール,炭化水素(テルペン類),脂肪性ビタミン.

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食の医学館 「脂質」の解説

ししつ【脂質】

〈脂質過剰の現代人〉
 脂質はエネルギー源となるほか、細胞膜などの構成成分や血液の成分となったり、ステロイドホルモンを合成したりします。脂質から摂取するエネルギーは全摂取エネルギーの20~25%が望ましいとされていますが、すでに上限を超えているのが現状です。たしかに肥満の弊害が認識され、バターなどの油脂類は敬遠されがちです。肉類に含まれる飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)はコレステロールや中性脂肪をふやし、生活習慣病を引き起こすおそれがあります。
 しかし魚介類にも脂質は含まれ、これらに含まれる不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)が、生活習慣病の予防、改善に働くとして、注目を集めています。
〈IPA、DHAは脂質のサプリメント〉
 サプリメントとして市場に出回っているIPA、DHAは、ともに魚の脂肪に多く含まれる多価不飽和脂肪酸です。
 IPAは血小板の凝固を抑制する力が強いうえ、血栓(けっせん)を溶かし、血管を拡張させ、血液中の中性脂肪を減らす働きがあります。このため動脈硬化や心筋梗塞(しんきんこうそく)、脳卒中(のうそっちゅう)を予防します。また慢性関節炎の症状改善にも効果を発揮します。IPAは魚の脂肪以外に、体内でDHAからも合成されます。
 DHAは悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールをふやす作用が顕著ですが、脳や神経組織の発育や機能維持にも重要な役割をはたすため、学習能力の強化、認知症の改善が期待されます。
 ビタミンFとも呼ばれるα(アルファ)―リノレン酸も、多価不飽和脂肪酸の一種で、血圧、血糖値、コレステロール値を低下させ、生活習慣病の予防に効果があります。また、IPA、DHAの原料にもなります。天然では、シソ油、エゴマ油などの植物油に多く含まれます。サプリメントでは、ブドウ糖を原料にして人工的に生産された高純度のものが製品化されています。これはおもにドリンク剤などに添加されています。

ししつ【脂質】

脂質(ししつ)は体のエネルギー源やホルモン、胆汁(たんじゅう)の材料となるほか、ビタミンA、D、Eなどの円滑な吸収にも不可欠な栄養素です。脂質のうち、動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)は、コレステロールをふやしたり、血液の粘度を高める作用があります。一方、植物性脂肪に多い不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)にはコレステロールを減らしたり、血をサラサラにする作用があります。
 脂質には1gあたり約9kcalと、炭水化物やたんぱく質の倍以上のエネルギーがあり、とりすぎは肥満や生活習慣病に直結します。成人の適正な脂肪目標量は、1日の総摂取エネルギーのおよそ20~25%と考えてください(18~29歳では20~30%)。
 可食部100g中に含まれる脂質の多い食品として、以下のものがあります。バター(無塩)83g、マカダミアナッツ76.7g、マヨネーズ(全卵型)75.3g、クルミ68.8g、牛サーロイン脂身付き(和牛)47.5g、豚ばら肉(大型種)35.4g。

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百科事典マイペディア 「脂質」の意味・わかりやすい解説

脂質【ししつ】

リピドとも。タンパク質,糖質とともに生体を構成する重要な物質群。かなり広い範囲の多様な物質の総称だが,長鎖脂肪酸やその誘導体・類似体で生体由来のものを一般にさす。中性脂肪(単に脂肪とも),蝋などの単純脂質,リン脂質糖脂質などの複合脂質,およびこれらの加水分解生成物で脂溶性の誘導脂質に分類される。多様な生理機能を担っており,特に複合脂質は細胞膜の基本成分として重要。
→関連項目カテキン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「脂質」の意味・わかりやすい解説

脂質
ししつ
lipid

生体中に蛋白質,糖質とともに存在する物質。エーテル,クロロホルムなどに溶ける。加水分解によって変化を受けない不けん化物 (ステロールなど) ,脂肪酸とグリセリンあるいは高級アルコールを生じる単純脂質 (脂肪,ろうなど) ,複雑な構造をとり,加水分解によってリン酸,窒素塩基,糖などを生じる複合脂質の3つに分類される。複合脂質にはリン酸を含むリン脂質 (レシチンなど) ,スフィンゴシンを構成成分とするスフィンゴミエリン,糖を含む糖脂質 (ガラクトリピドなど) ,硫酸あるいはスルホン基と結合しているスルホリピドなど多くの種類があり,蛋白質あるいはペプチドと結合したリポ蛋白質,プロテオリピドなども知られている。これらの脂質には,生体機能と密接な関係があり,細胞膜構造の成分になるなど,重要な役割をもっているものが少くない。

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「脂質」の解説

ししつ【脂質】

三大栄養素のひとつ。生物から単離される水に溶けない(溶けにくい)物質の総称。「単純脂質」、「複合脂質」、「誘導脂質」の3種に大別される。多くの脂質には脂肪酸が含まれており、細胞膜の成分やホルモンの材料などになるほか、エネルギーの貯蔵、体温維持、皮膚の保護、脂溶性ビタミンの吸収を促進などの作用をもつ。不足すると発育の障害や、皮膚炎の原因になることもある。

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栄養・生化学辞典 「脂質」の解説

脂質

 タンパク質,糖質に対して使われる語.定義は必ずしも一致していないが,分子中に長鎖脂肪酸またはそれと類似した炭化水素の鎖をもち,生体内に存在するもの,もしくは生物に由来する物質,とされる.また,水に溶けにくくエーテル,ベンゼン,クロロホルムなどに溶ける物質と定義されることもある.通常,トリアシルグリセロールなど,脂肪酸を分子内に含む物質を指すが,ステロール,カロテノイド,イソプレノイドなども広義には含まれる.

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