改訂新版 世界大百科事典 「リュトン」の意味・わかりやすい解説
リュトン
rhyton[ギリシア]
獣角あるいは動物の頭部をかたどった杯。垂直の単把手がつくものもある。またギリシア・ローマ時代の,人間(とくに女性)の頭部をかたどり絵付を施した陶器もリュトンと呼ぶ。獣角や動物の頭部形のリュトンには犬,狐,牡牛,馬,牡鹿,牡豚(または猪),牡羊,鷲,牡鶏,あるいは空想上の動物,たとえばグリフォンなどをかたどったものがある。飲口が広く,底が細いので,飲みほさないうちは置くことができないようになっているが,のちには台座をつけたり,置けるように形を変えたものも現れる。
素材は陶器,ガラス,金属製のものがある。ガラス製ではローマ・ガラスやアケメネス朝ペルシアにおけるものがよく作られており,また金属製のものはササン朝ペルシアのものによくみられる。(図)
→角杯
執筆者:石田 純三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報