日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴシュユ」の意味・わかりやすい解説
ゴシュユ
ごしゅゆ / 呉茱萸
[学] Tetradium ruticarpum (Juss.) T.G.Hartley
Evodia rutaecarpa (Juss.) Benth.
ミカン科(APG分類:ミカン科)の落葉小高木。高さ2.5~5メートル。葉は対生し、奇数羽状複葉で、長さ15~35センチメートル。小葉は5~11枚つき、質は厚く全縁でほぼ楕円(だえん)形をなし、先端は急にとがる。両面に淡黄褐色の長い柔毛を密生する。雌雄異株。8月ころ枝端に散房花序をつけ、淡緑白色の花を多数開く。花軸は太く、毛を密生し、花弁は5枚、楕円形で、内側に白色の長い毛を密生する。子房は円球形で、成熟すると紫紅色となり、表面に粗大な腺点(せんてん)が現れる。これをつぶすと独特の強い香りを発する。中国の中南部原産で、揚子江(ようすこう)以南で広く栽培される。日本には1720年ころ雌木だけ渡来し、いまでは各地に生育している。
漢方では、やや成熟した果実を乾燥したものを呉茱萸とよぶ。精油とアルカロイドを含有し、鎮痛、健胃、止瀉(ししゃ)、駆虫作用があるので、頭痛、腹痛、嘔吐(おうと)、冷え症などの治療に用いられる。
ゴシュユは、中国北部と朝鮮半島に野生するシュユ(イヌゴシュユ)T. daniellii (Benn.) T.G.Hartley(E. daniellii Hemsley)に対し、南方すなわち古代の呉(ご)のシュユという意味の名称である。ニセゴシュユとよぶこともあるが、中国にあり、ゴシュユの変種であるホンゴシュユと同様に薬用に供されるので、ニセを冠した呼称はよくない。
[長沢元夫 2020年10月16日]