ルター大小教理問答 (ルターだいしょうきょうりもんどう)
宗教改革者ルターによって,いずれも1529年に著された二つの教理問答。キリスト教会初期以来の信徒信仰教育の伝統を,聖書中心,神中心,信仰中心の宗教改革的立場により改めて生かして書かれた。1527年以来,ザクセン選帝侯領内の教会巡察によって信徒の信仰的な無知ともいえる状態を見て憂慮したルターが,〈十誡〉〈使徒信条〉〈主の祈り〉など10年来説教や著作で解説してきたものに加え,洗礼と聖餐についても解説して,問答形式にしたものが《小教理問答Kleiner Katechismus》,説教の要約の形にしたものが《大教理問答Grosser Katechismus》である。前者は洗礼準備教育,青少年信仰教育の土台となるので日本でも1895年に初訳されている。
執筆者:徳善 義和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ルター大小教理問答
ルターだいしょうきょうりもんどう
Der grosse Katechismus und der kleine Katechismus
ドイツの宗教改革者 M.ルターが 1529年に著わしたキリスト教の信仰を志願者や小児に教えるための書。大,小の2種があるが,十戒,使徒信条,主の祈りなどの解説から成り,ルター派の信仰の基本を示すもの。教理を口頭で教えることを目的としているが,大教理問答は問答体ではない。古代からキリスト教各教会で書かれた教理問答書の一つ。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のルター大小教理問答の言及
【ルター】より
… 27年には,選帝侯ヨーハンに働きかけ,その命で領内教会巡察に取りかかり,プロテスタント教会の組織化をはじめるが,これはまた以後ドイツの[領邦教会]体制の始まりともなった。教会巡察は[メランヒトン]などによる各地の教会規則制定に至るが,ルターは29年に大小二つの教理問答書(《[ルター大小教理問答]》)を著して,民衆の信仰教育を心がけた。その年プロテスタントの政治的結集を求める諸侯の願いでもたれたチューリヒの[ツウィングリ]との神学会談は,聖餐論において一致に至らなかったが,30年アウクスブルク国会には,いくつかのルターの信仰告白を基とした,メランヒトン起草の〈[アウクスブルク信仰告白]〉が提出され,これによって[ルター派教会]がしだいに西欧各地に形成されていく。…
※「ルター大小教理問答」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」