翻訳|Eucharist
キリスト教の基本用語の一つ。聖書ギリシア語のeucharistia(特に〈神に対する感謝〉の意)に由来する。キリスト者にとって最も完全な感謝は,その教会生活の中心となる礼拝集会であるとして,古代からこれに同じ言葉が用いられ,日本語では〈感謝の祭儀〉と訳す。聖書朗読によることばの典礼を通して秘跡の典礼に入るので,この中心部分を〈感謝の典礼〉と呼ぶ。さらにその中で聖別されたパンとブドウ酒(特にパン)にも同じ言葉が使われるようになり,これを日本語でカトリック教会では〈聖体〉と呼び,プロテスタント教会では一般に聖別の制定句と陪餐(聖体拝領)を含むHoly Communionの訳語として〈聖餐〉が使われている。〈聖体〉は聖別されたパンとブドウ酒のほうに,〈聖餐〉はそれによるキリスト者の交わりの行為全体についてエキュメニカルに(教会一致の立場に立って)用いることができる。七つの秘跡の一つ,サクラメントの中心としての〈聖餐〉は,パンとブドウ酒の形態のもとにおけるキリストの現在だけに限られず,〈感謝の典礼〉とそれに続く〈交わりの儀〉全体に及ぶべきもので,キリストの制定によることばとパンとブドウ酒のしるしによる,キリストの十字架上の奉献の記念祭儀への完全な参加を意味する。
→最後の晩餐
執筆者:土屋 吉正
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キリスト教の秘蹟(ひせき)(サクラメント)の一つ。カトリック教会では聖体拝領という。キリストが「最後の晩餐」のとき,パンとブドウ酒をキリストの肉体と血として弟子たちに授けたことを起源とする。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
…キリスト教の儀礼の中心である聖餐において,聖別されたパンとブドウ酒の形態に現在するキリストを表す用語。原語は聖餐と共通。中世におけるサクラメントの見方は,ラドベルトゥス以来の聖体論争に見られるように,サクラメントにおける恩恵の働きの実在を,素材の中に実体的に対象化して考える傾向が強く,その中で,聖別された素材は恩恵の単なる象徴にすぎないとするトゥールのベレンガリウスの説は異端として退けられた。そのため,聖餐のサクラメントにおけるしるしもキリストの体と血をともに食する行為ではなく,目で仰いで礼拝の対象とするパンの形態にその関心が集中し,その影響は典礼にまで及んだ。…
…こんにちの批判的研究からすると,キリスト教はイエスに始まるとか,その内容は〈愛の教え〉であるということは単純には支持できない。イエスは自分をメシア(旧約聖書にいう終末的な救済王)と称したことはなく,教会の建設を命じたり,洗礼・聖餐というサクラメントを設定したことはない。これらは福音書に書かれているとしても,イエス以後の教会の自己理解のなかで書かれたものである。…
… ラテン語のsacramentumとmysteriumとは,最初は同義語として諸教父や典礼の文書に使われていたが,やがてmysteriumのほうは,理性だけでは理解できないが啓示によって初めて信仰の対象となる奥義の意味になり,sacramentumは,アウグスティヌス(430没)のころから,救いの恵みの実在の見えるしるしsacramentum visibileのほうを強調するときに使われるようになった。こうして洗礼や聖餐を中心に,教会の諸活動にことばとしるしによるキリストの救いの恵みの実現を見るサクラメント(秘跡)観がしだいに形成された。アウグスティヌスは秘跡における見える物的素材を〈しるしsignum〉,それによって表される神の救いの働きを〈事自体res〉と名付け,これを成立させているのがキリストの秘跡制定の〈ことばverbum〉であると考えた。…
… 肉と霊,肉体と精神の二元論は宗教が成立する基盤である。イエスの生誕を〈受肉〉と言うキリスト教のカトリックの教義には七つの秘跡(サクラメント)があり,その一つが聖体または聖餐の秘跡である。別名〈肉と血の秘跡〉で,信者がキリストの肉と血を象徴するパンとブドウ酒を受けることをいい,新約聖書にあるように,キリストが〈最後の晩餐〉のときにこれを定めたとされる。…
…しかし母鳥は死んだわが子を3日間悼んだあと,右胸から血をしぼりこれを雛にふりかけて蘇生させる。ここから,雛に血をかける母鳥は〈聖餐(せいさん)〉および〈自己犠牲〉の寓意としてキリスト教に受容され,〈孝心あるペリカンpelican in her piety〉と呼ばれる紋章になっている。この図像は磔刑図の十字架の上によくかき加えられる。…
※「聖餐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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