日本大百科全書(ニッポニカ) 「レッドコンプレックス」の意味・わかりやすい解説
レッドコンプレックス
れっどこんぷれっくす
red complex
口腔(こうくう)内に常在する細菌のうち、歯周疾患(歯周病)の発症にもっとも関連が深いとされる菌種群。ポルフィロモナス・ジンジバリスPorphyromonas gingivalis(P.g.菌)、トレポネーマ・デンティコーラTreponema denticola(T.d.菌)、タンネレラ・フォーサイセンシスTannerella forsythensis(T.f.菌)の3菌種をとくにレッドコンプレックスとよび、重症な歯周病を引き起こすもっとも危険な菌種群であるとされている。ほかにアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンスAggregatibacter actinomycetemcomitans(A.a.菌)やプレボテラ・インターメディアPrevotella intermedia(P.i.菌)も歯周病発症に深くかかわるとされる。
歯科領域ではおよそ700種以上ある口内の常在菌を、歯周病の原因と関連の深い順にピラミッドとして模式図化して表している。レッドコンプレックスはその頂点に位置する菌種群で、その下層にオレンジコンプレックス、最下層にブルー、パープル、グリーン、イエローコンプレックスの常在菌群が配置される。レッドコンプレックス菌種群のうち、P.g.菌は付着力が強いためバイオフィルムを形成しやすく、内毒素により歯の骨を溶かすほか、口腔内に悪臭をもたらす。またT.d.菌は歯と歯肉の間の溝が広がる歯周ポケットから組織内および血管内に入り込んで増殖し、T.f.菌も歯周ポケットに付着してこれも内毒素により歯周組織などに悪影響を及ぼす。歯周病には多くの菌種がかかわると考えられており、研究により各菌種の作用が少しずつ明らかになっている。
[編集部]