歯周病(読み)シシュウビョウ(英語表記)Periodontal disease

デジタル大辞泉 「歯周病」の意味・読み・例文・類語

ししゅう‐びょう〔シシウビヤウ〕【歯周病】

歯をとりまく組織にかかわる病気の総称。歯槽膿漏しそうのうろう歯肉炎歯周炎など。

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共同通信ニュース用語解説 「歯周病」の解説

歯周病

歯と歯茎の境目に細菌を含む歯垢しこう(プラーク)が増えて歯茎が腫れ、歯周ポケットと呼ばれる溝ができる歯肉炎と、症状が進行して歯槽骨が溶ける歯周炎の総称。歯が抜け落ちることもある。治療では、こびりついた歯垢が固まってできる歯石などを器具を使い除去する。ポケットの深いところに入り込んだ歯石を取るため歯茎を切開する「フラップ手術」という外科治療をすることもある。

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精選版 日本国語大辞典 「歯周病」の意味・読み・例文・類語

ししゅう‐びょうシシウビャウ【歯周病】

  1. 〘 名詞 〙 歯を取り巻く組織である、歯肉・歯槽骨・歯根膜・セメント質におこる病気の総称。歯肉炎に始まり、歯周炎(歯槽膿漏)に至る。

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家庭医学館 「歯周病」の解説

ししゅうびょうしそうのうろう【歯周病(歯槽膿漏) Periodontal Disease】

◎ほとんどの人にみられる病気
[どんな病気か]
◎歯がぐらつき、最後に抜ける
[症状]
[検査と診断]
[治療]

[どんな病気か]
 歯周病は、かつて歯槽膿漏といわれたもので、歯のまわりの、歯を支えている組織(歯周組織)がじわりじわりと壊されていく病気です。歯槽膿漏ということばは、歯ぐき(歯槽)から膿(うみ)が出る(膿漏)ことに由来しています。
 歯周病はむし歯とならぶ歯科の二大疾患で、35歳以上の日本人で歯周病のない健康な歯ぐきをもつ人は、100人に1人もいないといわれています。
 ほとんどの歯周病は激しい痛みがなく、はっきりした自覚症状がないまま静かに経過する慢性の病気です。
 歯周病は、はっきりした症状がないまま進行するため、歯がぐらぐらして、おかしいと気づいたときには、すでに手遅れの状態ということも少なくありません。このような場合、歯を支える歯周組織の大半が失われているのです。
 歯周病はゆっくり進行しますが、厳密にいうと、ほとんど症状を示さない時期(静止期)と、その後に続く激しい急性炎症と組織の破壊のみられる時期(活動期)がくり返しおこっているのです。急性炎症と組織破壊によって歯と歯肉(しにく)の間に亀裂(きれつ)ができますが、この亀裂を歯周ポケットといいます。
 歯周ポケットができると同時に、歯のまわりの結合組織も歯槽骨(しそうこつ)も破壊されてしまいます。外から見ると、歯ぐきがやせて退縮し、歯の根が現われるようになり、やがて歯がぐらぐらして、最終的には歯が抜け落ちてしまいます。このような症状を示す歯周病の原因は、歯肉付近の歯についた歯垢(しこう)(プラーク)の中の細菌です。
■成人性歯周炎(せいじんせいししゅうえん)
 歯周病のほとんどは成人性歯周炎と呼ばれるもので、青年期以降の人にみられ、成人の75%以上の人が、多少とも歯周炎にかかっているといわれています。残りの約1割が若年性歯周炎と急速進行性歯周炎と呼ばれるものです。
 成人性歯周炎は名前が示す通り、30歳以降に発病するものです。歯に非常に多くの歯垢がついていて、歯周組織は少しずつ破壊されていきます。歯垢の量が多ければそれだけ強い炎症が現われ、骨は水平方向にも垂直方向にも吸収されます。その原因となる菌はポルフィロモナス・ジンジバリスやスピロヘータなどです。
■若年性歯周炎(じゃくねんせいししゅうえん)
 若年性歯周炎は10~15歳の女性にみられ、第1大臼歯(だいきゅうし)と前歯(ぜんし)の歯周組織が破壊されます。歯肉は正常な形で、ピンク色をしていますが、歯槽骨が破壊され(骨吸収)、歯周ポケットが深くなっています。若年性歯周炎の場合、家族のなかに同じ症状を示す人がいることもあります。
 原因となる菌はアクチノバシラス・アクチノミセテムコミタンスで、成人にみられる歯周病の病原菌とは別の菌です。若年性歯周炎は白血球(はっけっきゅう)の機能異常とも関係があるといわれています。
■急速進行性歯周炎(きゅうそくしんこうせいししゅうえん)
 急速進行性歯周炎では、非常に短い期間に歯周組織が破壊されるのが特徴です。思春期から35歳までの間に発生するといわれています。この歯周炎も白血球の異常と関係があるといわれています。
●進行のしかた
 歯周病は、正常な歯肉にまず歯肉炎(しにくえん)がおこることで始まり、これがさらに進行すると歯周炎(ししゅうえん)になります。
 歯周病の発症と進行の過程は、開始期病変、早期病変、確立期病変、発展期病変に分類されます。
①開始期病変
 歯みがきをやめ、歯垢がつきはじめて2~4日後におこる歯肉の表面の急性の炎症をいいます。
②早期病変
 歯垢がついてから1週間後にみられ、明らかな歯肉炎を意味します。
③確立期病変
 歯周ポケットが形成され、炎症がさらに広がって上皮(じょうひ)の下の歯肉結合織におよびます。
④発展期病変
 確立期病変の炎症がさらにひどくなった状態で、歯周炎といわれるものです。炎症は歯肉の部分を越えて、内部の歯根膜(しこんまく)、歯槽骨にまでおよんでいます。
●歯周組織の変化
 歯肉炎や歯周炎になると、歯周組織にさまざまな変化がおこります。歯肉炎の基本的な変化は、歯についている歯肉(付着上皮)のすぐ下の歯肉結合織にみられます。この部分の血管が充血したり拡張したり、血管からの成分が外に出て液状成分が組織にたまります(浮腫(ふしゅ))。また好中球(こうちゅうきゅう)やリンパ球など炎症と関係のある細胞が多数出現します(炎症性細胞浸潤(えんしょうせいさいぼうしんじゅん))。
 歯肉炎のなかには、浮腫が著しいもの、炎症が強いもの、または線維が増えているものがあります。細胞や線維が増えている歯肉炎は増殖性歯肉炎(ぞうしょくせいしにくえん)と呼ばれます。
 歯肉の縁にだけ組織の破壊(壊死(えし))や潰瘍(かいよう)が形成されるものは急性壊死性潰瘍性歯肉炎(きゅうせいえしせいかいようせいしにくえん)と呼ばれます。
 この歯肉炎では、紡錘菌(ぼうすいきん)とスピロヘータが増えているのが特徴です。紡錘菌もスピロヘータも、正常な人の口の中にいる菌なので、これらが増えるということは、全身衰弱などによって抵抗力が弱くなったためと考えられます。
 歯周炎は、炎症の変化が歯肉を越えて歯根膜および歯槽骨にみられるものをいいます。歯肉炎と同じように、血管が拡張したり浮腫などがおこり、炎症時に出現する細胞が多数現われます。歯周ポケットができ、ポケットをおおう上皮が歯根の先にむかって侵入していきます。さらに、歯槽骨が吸収され、歯根膜線維も破壊されます。その結果、歯と骨とをつないでいた結合組織が失われてしまいます。また、セメント質も変性・破壊などの変化を受けます。このため、歯周病にかかった歯はぐらぐら動くようになります。

[症状]
 歯肉炎や歯周炎の症状の特徴は、①歯肉が赤くなり、腫(は)れる、②痛みがある、③歯肉から血が出る、④スティップリング(歯肉の表面のオレンジの皮に似た小さなつぶつぶ)が見えなくなる、⑤歯肉が盛り上がったり(増殖)やせたり(退縮)する、⑥歯周ポケットが形成される、⑦歯周ポケットから膿が出る、⑧歯がぐらぐらする、⑨口臭がひどい(口気悪臭)、⑩歯垢や歯石が歯の表面についている、などです。
 歯垢によってつくられた起炎物質(炎症をおこす原因物質)や抗原物質が歯周組織にはたらくと、その部位では血液の流れが障害され(循環障害)、血液の成分が血管の外に出ます(滲出(しんしゅつ))。つまり、歯肉の細い血管がまずひろがり、そこに血液が流れ込んで充血がおこります。これによって炎症をおこしている部位は赤くなったり熱をもったりするのです。
 さらに、血管の壁をつくっている細胞(内皮細胞)が障害を受けたり、化学伝達物質と呼ばれる物質の作用によって、血管が物質を通過させやすい性質に変化します(血管透過性の亢進(こうしん))。そうすると、血管内の成分がどんどん血管外へ出て組織内にたまることになるので、歯肉が腫れることになります。
 以上が、炎症をおこした部位が腫れる(腫脹(しゅちょう)する)理由です。好中球などの滲出細胞は血流がゆるやかになると、血管壁にくっつき、アメーバ運動によって血管壁を通過することができるのです。好中球は細菌や特定の物質に近づき(遊走(ゆうそう))、集まる性質をもっています。好中球が大量に集まると、膿がつくられ、排膿(はいのう)や潰瘍の形成といった症状が現われます。

[検査と診断]
 歯周病の診断では、従来からX線写真によって骨の吸収の度合い、歯周ポケットの深さ、付着喪失の程度、歯周ポケットに器具を入れたときに出血があるか、歯の動揺度などについて調べてきました。
 さらに正確で詳しい診断をするために、これらに加えて、最近では細菌学的検査法や免疫学的検査法も行なわれるようになっています。これには、局所の細菌を直接観察する方法、細菌に対する抗体を使って調べる蛍光抗体法(けいこうこうたいほう)、細菌を培養する方法、歯周病の原因菌の特異的なDNAをプローブとして調べるDNAプローブ法、歯肉溝滲出液中の炎症物質を測定する方法などがあります。これらは、診断キットによって、診療室のチェアサイドで簡単に検査できるようになっています。

[治療]
 歯周病の治療は、その原因が細菌であるという考えに基づいて行なわれます。まず原因を取り除き、口の中を清潔にするため、初期治療を行ないます。
 具体的には、腫れや痛みをしずめる、炎症を軽くする、かみ合わせを調整してかめるようにするなどの治療が行なわれます。このなかで、歯に付着している歯垢、歯石、食物残滓(しょくもつざんし)(食べ物の残りかす)などを取り除き、歯や歯肉を清潔に保つためのプラークコントロールがたいへん重要になります。
 歯の表面のよごれ(歯垢や歯石)を取り除くためにスケーリング、ルートプレーニングという処置を行ないます。スケーリングは歯石除去(しせきじょきょ)ともいい、歯に付着している歯石などの異物を取り除く方法です。ルートプレーニングは、キュレットという器具を用いて歯根面の歯垢、歯石、壊死セメント質を除去して滑らかにする方法です。
 歯周ポケットの内側で炎症をおこしている病的な組織を掻(か)き出す、歯周ポケット掻爬(そうは)という治療も、しばしば行なわれます。また、歯周ポケット内の細菌を減らすために抗生物質抗菌薬をポケット内に入れる薬物療法もよく用いられる方法です。
 以上のような方法では病的な組織を十分に取り除くことができないような場合には、歯ぐきを切って、ルートプレーニングによって歯根面をきれいにした後、歯ぐきを縫い合わせる歯周外科も行なわれます。
 さらに、歯根面の異物を取り除き滑らかにするだけでなく、積極的に失われた組織を再生させるGTRという方法も応用されています。

出典 小学館家庭医学館について 情報

六訂版 家庭医学大全科 「歯周病」の解説

歯周病(歯周疾患)
ししゅうびょう(ししゅうしっかん)
Periodontal disease
(歯と歯肉の病気)

中高年の8割に歯周病が

 歯周病は、歯のまわりにある組織(歯周組織という)のいずれか、あるいはすべてに起こる疾患の総称で、歯周疾患とも呼ばれます。

 歯周組織は、歯肉(しにく)(歯の根と骨をおおっている部分で、通称歯ぐきという)、セメント質(歯の根の表面部分)、歯槽骨(しそうこつ)(歯を支えているあごの骨の一部)および歯根膜(しこんまく)(セメント質と歯槽骨とを連結している膜で、歯周靭帯(ししゅうじんたい)ともいう)から構成されます(図30図32)。

 主として歯肉から炎症が起こる歯肉炎(しにくえん)歯周炎(ししゅうえん)と、歯周組織の深部(セメント質、歯槽骨、歯根膜)から非炎症性で破壊が起こる咬合性(こうごうせい)外傷に大別できます。日本人の約7割が歯肉に何らかの異常があり、働き盛りの中高年では、実に8割の人に歯周病があると報告されています(表1)。

 これまで、歯周病は一度かかったら治らない不治の病ともいわれてきましたが、20世紀末になってその原因が次第に明らかになってきました。

 歯肉炎や歯周炎は、口のなかにすんでいる細菌(口腔常在菌(こうくうじょうざいきん))によって起こる感染症であることに意見の一致をみています(表2)。また、咬合性外傷は、歯周組織の適応能力を超えた力が加わることによって起こることもわかっています。

歯周病は生活習慣病

 最近では、歯周病は生活習慣病として位置づけられ、食習慣、歯みがき習慣、喫煙などとも関連があるので、単に歯科医による治療のみではその効果があがらないことも明らかになってきました。患者さん個人の生活習慣の改善、自助努力も歯周治療の成否に大きく関与することを理解することが大切です。

 歯や口は、消化器官の一部としての役割をもっていると同時に、体全体ともつながっていることを再確認することが重要です。歯周病が口のなかに限局しているだけでは、それほど大きな問題にはならないのですが、長期間慢性化することによって、病原性をもった細菌が血液中に入ったり、飲み込まれて口から離れた心臓や肺などの遠隔(えんかく)臓器に行き着き、そこに病気を起こす可能性が高くなります(図31)。

 したがって、歯周病を予防したり、コントロールすることは、単に歯や口の健康を守るのみならず、全身の健康をも守ることにつながり、人生80年の高齢社会を豊かで快適に過ごすために極めて重要となることを理解しましょう。

 以下、それぞれの病気についてみていきます。

伊藤 公一


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

食の医学館 「歯周病」の解説

ししゅうびょう【歯周病】

《どんな病気か?》


〈歯垢の中の細菌が原因で歯ぐきに炎症が起こる〉
 歯周病(ししゅうびょう)は、かつて歯槽膿漏(しそうのうろう)と呼ばれていたものです。歯ぐきに炎症が起こって血や膿(うみ)がたまり、歯を支えている組織が少しずつこわされていく病気で、原因は歯垢(しこう)(プラーク)の中の細菌です。
 初期には痛みを感じないため、気づいたときにはかなり病状が進行しているケースが多く、歯が抜け落ちてしまうこともあります。
 また、歯周病があると、歯周病菌に対抗する白血球が歯周ポケットの中に集まります。そのときに白血球から放出される「サイトカイン」や「プロスタグランジン」などの生理活性物質が同時に増加します。すると、それらが血液中に広がり、心臓や肺、子宮などの臓器に悪影響を与えると考えられています。

《関連する食品》


〈カルシウム、ビタミンDを含む食品をとる〉
○栄養成分としての働きから
 歯周病の原因の1つとして、歯の硬組織をつくるリンの不足が指摘されていますが、リンはほとんどの食品に含まれているため、不足の心配はありません。むしろリンが正常に働くためのカルシウムの不足が問題となります。
 カルシウムを多く含む食品は、ワカサギやシシャモといった小魚や海藻、ダイズ、ブロッコリー、ゴマ、青菜、牛乳およびヨーグルト、チーズなどの乳製品があげられます。
 これらカルシウムの多い食品と、カルシウムの腸からの吸収を助けるビタミンDを多く含むサケ、カジキ、サンマ、サバなどの魚類を合わせて食べるようにしましょう。
 健康な歯ぐきを形成するために、コラーゲンの生成に必要なビタミンCをとることもたいせつです。青菜類やブロッコリー、芽キャベツ、パセリ、イモ類などを積極的にとりましょう。
 歯ぐきから血がでるときには、止血作用の高いビタミンKを含んでいる納豆、コマツナなどの青菜、抹茶などが効果的です。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「歯周病」の意味・わかりやすい解説

歯周病
ししゅうびょう
periodontal diseases

歯周疾患ともいう。歯肉炎,辺縁性歯周炎,歯周症など,俗に歯槽膿漏といわれる歯周組織の病変の総称。ただし腫瘍性病変や,歯髄炎から起る根尖性の歯周炎は含まれない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「歯周病」の意味・わかりやすい解説

歯周病【ししゅうびょう】

歯槽膿漏(しそうのうろう)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「歯周病」の意味・わかりやすい解説

歯周病
ししゅうびょう

歯周疾患

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