日本大百科全書(ニッポニカ) 「レルネット・ホレーニア」の意味・わかりやすい解説
レルネット・ホレーニア
れるねっとほれーにあ
Alexander Lernet-Holenia
(1897―1976)
オーストリアの作家。ウィーン生まれ。母方の養子として育ったため、複合名を名のる。第一次世界大戦参加後、リルケの影響を受けて詩作を始め、数編の詩集を発表、さらに戯曲をも手がけた。その間、幾度も大旅行を試み、とくに南米には長期間滞在した。しかし第二次世界大戦の直前に帰国、ポーランド侵攻作戦に参加したが、負傷して後方勤務となり、終戦までベルリンで軍映画製作班の製作主任を務めた。戦後ふたたび作家生活に戻り、1969年から3年間自国のペンクラブ会長を務めた。彼の本領は、夢とも現実とも決めがたい幻想的な体験を描く小説にあり、初期の名作『軍旗』(1934)をはじめ、『白羊宮の火星』(1941)、『サン・ジェルマン伯』(1948)などの長編、『モナ・リザ』(1937)などの短編がよく知られている。
[平田達治]
『前川道介・平田達治訳『白羊宮の火星』(1984・エディシオン・アルシーヴ)』