モナ・リザ(読み)もなりざ(英語表記)Mona Lisa

翻訳|Mona Lisa

日本大百科全書(ニッポニカ) 「モナ・リザ」の意味・わかりやすい解説

モナ・リザ
もなりざ
Mona Lisa

ルネサンス美術の巨匠レオナルド・ダ・ビンチの代表的肖像画。1503年から1506年ごろ制作されたが未完成。晩年、彼がフランスへ招かれたとき持参し、フランソア1世によって1万2000フランで買い取られた。1805年以来、パリのルーブル美術館に所蔵されて現在に至る。油彩、ポプラ板、縦77センチメートル、横53センチメートル。保存状態はあまりよいとはいえず、ことに画面左右の柱は両端が7センチメートルほど切り落とされた。別名ラ・ジョコンダ』といわれるこの絵の通称は、フィレンツェのフランチェスコ・デル・ジョコンドに嫁したリザ・ゲラルディニ(1479年生まれ)を描いたとするバザーリの記述に由来する。しかしモデルにはほかにジュリアーノ・デ・メディチの愛人説、マントバ侯妃イザベラ・デステとか、変身自画像などの諸説がある。その謎(なぞ)めいた女性微笑は、古くから聖と俗の両極的な評価さえ生んだ。15世紀の真横を向いた肖像に対し、黒衣婦人上体と顔を斜めにした斬新(ざんしん)な姿勢をとる。穏やかな視線と内省的な表情、豊かな胸や両手しぐさには、人間が宿す奥深い知性と感性、そして不思議な官能表現がみられる。また背後には高楼からアルプスを遠望するような湿潤な山岳風景が展開する。この東洋思想との交流をしのばせる超現実的な自然観と深遠な人間観との和合は、あたかもレオナルドの全芸術と創造精神を集約しているといえよう。時代を超えた世界の名画たるゆえんである。1911年に一度盗難にあったが、さいわい1913年の暮れに返却された。なお、この作品は1974年(昭和49)4月20日から6月10日まで、東京国立博物館で特別展示された。

[上平 貢]

『中山公男著『モナ・リザ――永遠の女性の謎』(1974・中央公論社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「モナ・リザ」の意味・わかりやすい解説

モナ・リザ
Mona Lisa

レオナルド・ダ・ビンチ作の婦人肖像画。 1503~06年頃フィレンツェで描かれたものと思われ,フランチェスコ・ダ・ジョコンドの依頼で彼の夫人を描いたものといわれる。そのため「ラ・ジョコンダ」とも呼ばれる。作品は未完成のままともいわれるが,ほのかな微笑を含んだ婦人の表情や,安らかな手の表現,背景は神秘性を深め公式的な肖像画の伝統に画期的な改革をもたらし,「モナ・リザの微笑」として世界に知られた。現在はルーブル美術館所蔵であるが,この絵の歴史的な経路には不明の点も多く,謎を深めている。 1974年日本に運ばれ,一般公開された。

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