日本大百科全書(ニッポニカ) 「レーモン」の意味・わかりやすい解説
レーモン
れーもん
Marcel Raymond
(1897―1981)
フランスの批評家。ジュネーブ生まれのスイス人。ベガンとともに批評におけるジュネーブ学派の生みの親的存在で、意識の批評あるいは「新批評(ヌーベル・クリティック)」の代表格。チボーデの後を継ぎ、ジュネーブ大学教授。外面批評すなわち学術論的文的なものと内面批評すなわち意識の、あるいは共感的批評との調和・共存がその特徴である。前者は『フランスの詩に及ぼしたロンサールの影響』(1927)により、後者は『ボードレールからシュルレアリスムまで』(1933)や『フランスの天才たち』(1942)によって代表され、詩人たちのみごとな「隠喩(いんゆ)的象徴的肖像」が描出されている。また『ルソー、自我の探究と夢想』(1962)がある。
[松崎芳隆]
『平井照敏訳『ボードレールからシュルレアリスムまで』(1974・思潮社)』