改訂新版 世界大百科事典 「ロマクス」の意味・わかりやすい解説
ロマクス
Alan Lomax
生没年:1915-
アメリカの民謡研究家,民族音楽学者。1937年以来やはり民謡研究家であった父親J.A.ロマクスの下でアメリカ民謡の収集に携わり,民謡の録音と歌唱様式に関する文化人類学的な興味を深めた。以来,アメリカ,イギリス,イタリア,スペインその他で伝承民謡の録音に従事し,数多くのLPレコードを制作したが,彼の名を一躍高めたのは,1963年に彼が組織した〈カントメトリクス・プロジェクトCantometrics project〉と名づけられた民族音楽学者の研究グループで,民謡の歌唱のさまざまな側面を計量的に分析し比較する研究法を開発したことである。これは録音された民謡の特徴,例えば,旋律線の形,フレーズの長さ,音量,声色,発声・発音上の特徴,その他30余の項目にわたる音楽構造からみた様式上の特徴を通文化的に比較するもので,結論として,民謡の様式はそれを生み出した文化の社会構造の特徴と密接な相関関係にあり,また歌唱様式の地理的な分布は,過去における民族移動の轍を跡づけ,文化の歴史的分布を鮮明に描き出していると唱えた(《民謡の様式と文化》1968)。ロマクスと彼の研究グループは舞踊に関しても同様なアプローチを試み,69年には《コレオメトリクスChoreometrics--映像による(舞踊の)通文化的型の研究法》と題された論文を発表し,また同名の映画を制作している。
執筆者:柘植 元一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報