デジタル大辞泉
「声色」の意味・読み・例文・類語
せい‐しょく【声色】
1 物を言うときの声と顔色。「声色を和らげる」
2 ようす。態度。「声色を改める」
3 音楽と女色の楽しみ。「声色にふける」
しょう‐しき〔シヤウ‐〕【声色】
仏語。聴覚・視覚など感覚の対象となるもの、すなわち六境のこと。六塵。
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こわ‐いろ【声色】
- 〘 名詞 〙
- ① 声のひびき。声の様子。こえつき。こわね。
- [初出の実例]「猶故実を廻らして、曲を色どり、こわいろをたしなみて」(出典:風姿花伝(1400‐02頃)七)
- 「カノヒトノ couairoga(コワイロガ) ヨイ」(出典:日葡辞書(1603‐04))
- ② 他人の声や動物の鳴き声をまねすること。多くは俳優、有名人などの声や口調を模写する場合に用いられる。元祿期の歌舞伎興隆につれて流行し、木戸芸者、吉原の幇間(ほうかん)、寄席(よせ)芸人などから専門家が出た。声帯模写。
- [初出の実例]「くたびれた・けふげんばなしこはいろで」(出典:雑俳・住吉御田植(1700))
せい‐しょく【声色】
- 〘 名詞 〙
- ① ものを言う声と顔いろ。
- [初出の実例]「天地のあひだにみちみちて声色(セイショク)貌象あるものみな天然一定の分数あり」(出典:翁問答(1650)上)
- ② ようす。態度。品行。〔和英語林集成(初版)(1867)〕 〔礼記‐中庸〕
- ③ 歌舞音楽と女色。
- [初出の実例]「宴飲声色を事とせず」(出典:徒然草(1331頃)二一七)
- [その他の文献]〔書経‐仲虺之誥〕
しょう‐しきシャウ‥【声色】
- 〘 名詞 〙 ( 「しょう」「しき」はそれぞれ「声」「色」の呉音 ) 仏語。総じて聴覚や視覚など感官にうったえるもの。六塵。
- [初出の実例]「この愚は眼前の声色にくらきによりてなり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)行持)
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声色 (こわいろ)
歌舞伎役者の声音や口調を模擬する芸能。元禄(1688-1704)ごろすでに幇間(ほうかん)によって宴席で行われていたという。正徳年間(1711-16)にあやめ屋平治が名女方芳沢あやめの,また神田紺屋町の酒屋の下男が藤村半太夫の浄瑠璃を真似て評判となり,中村座の木戸口で掛合の声色を使ったのが有名。このように,芝居の木戸の呼びこみを〈木戸芸者〉と呼び,その日場内で演じられている芝居の一くさりを人気役者の声をまねて聞かせることが行われていた。声色のための名ぜりふ集《鸚鵡石(おうむせき)》も刊行された。文政(1818-30)ころから寄席にもかかるようになり,数人で組んで小屋掛けの興行まがいのことまで行われるようになった。所作も入り扮装までほどこした物真似芝居ともいえるものである。幕末から寄席や流しに多くの芸人が輩出した。流しは,銅鑼(どら)と拍子木を持った二人連れが普通で,花柳界や夏の大川端の夜の景物であった。近代に入り〈声帯模写〉と呼ばれるようになって寄席芸として定着し,現代に伝わる。《婦系図(おんなけいず)》の〈湯島の境内〉に見られる声色の姿は,明治時代の流しを写している。
→せりふ尽し
執筆者:織田 紘二
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普及版 字通
「声色」の読み・字形・画数・意味
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声色
こわいろ
演劇、主として歌舞伎(かぶき)に付随した芸能の一種で、俳優の演技中の声や、台詞(せりふ)の癖をまねること。元禄(げんろく)(1688~1704)ごろから始まり、江戸中期以後は「木戸芸者」という劇場専属の宣伝係が狂言外題(げだい)や役割を読み上げるとき、俳優の声色を使うことが多かったので、一般にも普及した。鸚鵡石(おうむせき)、せりふづくしなどの刊行とともに、歌舞伎ファンの趣味として行われたばかりでなく、幇間(ほうかん)たちの間にこれを専門とする芸人も現れ、幕末から明治にかけては、2人連れで銅鑼(どら)や拍子木を持って流して歩く声色屋が現れたが、歌舞伎の観客が限られてくるにつれて衰えた。しかし、第二次世界大戦前、喜劇俳優古川緑波(ふるかわろっぱ)は声帯模写と称する新形式の声色芸を創始。この系統の演芸は現代も流行して、歌舞伎以外の芸能人や政治家など、有名人の声のまねを演じている。
[松井俊諭]
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声色
こわいろ
俳優のせりふ回しの声や口調をまねること。古く元禄年間 (1688~1704) に始るが,のち劇場前で興行の宣伝のため,出演俳優の声色を使う木戸芸者により発達した。天明年間 (81~89) には吉原その他の幇間 (たいこもち) のなかに声色専門の芸人が生れ,江戸時代末期には両国あたりの料亭を回る声色船,さらに銅羅や拍子木を持って流して歩く2人連れの声色屋が現れた。また寄席にも声色専門の芸人がいる。昭和期には古川緑波によって,芝居の模倣からその対象を広げた声帯模写へと変革した。声色を学ぶ本として,正徳年間 (1711~16) に名ぜりふ集があり,以後「鸚鵡石 (おうむせき) 」の名称で多く版行された。
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声色【こわいろ】
歌舞伎役者のせりふ回しの癖をまねる芸能。元禄年間に幇間(ほうかん)等によって宴席で行われ,のち芝居の木戸で客寄せに使われた。19世紀頃から寄席にも出るようになり,〈流し〉も行われた。近代に入って,まねる対象が浪曲師,映画俳優から一般有名人にまで及び,声帯模写となった。→鸚鵡石(おうむせき)
→関連項目八人芸
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世界大百科事典(旧版)内の声色の言及
【大衆演芸】より
…東京では昭和30年代以後林家正楽が紙切りとして一家をなしている。 声色([声帯模写])は,江戸時代から行われた大衆演芸の一つだが,昭和の現代に及んでも衰えていない。歌舞伎・新派・新国劇・新劇の俳優,浪曲師,歌手,政治家,テレビタレントの声から鳥獣の鳴き声までまねて人気がある。…
【ものまね(物真似)】より
…技芸としての物真似は,肉体による表現に言語をも伴うものへと変化する。後には〈声色〉〈声帯模写〉へと移行していく。〈少将物真似師吉兵衛を呼び,五郎さま朝比奈のこわいろの上手ゆへ頼みました〉(《傾城嵐曾我》1708),〈近年はやり出て役者の物まね,身ぶりを其まゝにうつして〉(《役者正月詞》1726)などの用例がある。…
※「声色」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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