アコニターゼ（その他表記）aconitase

改訂新版　世界大百科事典

アコニターゼ
aconitase

生物のエネルギー代謝に関与する酵素の一種。クエン酸回路を持つすべての生物に広く分布する。動物の肝臓や筋肉から精製される。クエン酸回路において，クエン酸⇄シス-アコニット酸⇄イソクエン酸の相互転換を触媒する。生理的pH（7.4）での平衡状態ではクエン酸が9割以上であるが，イソクエン酸が速やかに酸化されるため反応はイソクエン酸生成の方向に進む。

　シス-アコニット酸はアコニターゼと結合した中間体として存在している。シス-アコニット酸の二重結合へのHおよびOHの付加はきわめて高い立体特異性を持つ。酵素（アコニターゼ）の活性中心付近に存在する2価の鉄原子と基質の複合体が反応の立体特異性の決定に重要な役割を果たしている。
執筆者：柳田 充弘

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

化学辞典 第2版

アコニターゼ
アコニターゼ
aconitase

EC 4.2.1.3．アコニット酸ヒドラターゼともいう．cis-アコニット酸に水を付加し，クエン酸またはイソクエン酸を生成する反応を触媒する酵素．トリカルボン酸サイクルの1段階に関与する酵素で，生物界に広く存在する．クエン酸からイソクエン酸に連続的に変化する系では，cis-アコニット酸は酵素に結合した状態で存在し，遊離状態とならない．この酵素はシス形に対する厳密な立体特異性がある．平衡状態における各物質の存在比は，クエン酸：cis-アコニット酸：イソクエン酸 ＝ 91：3：6である．Mg^2＋ は平衡をクエン酸側にずらす．[CAS 9024-25-3]

出典　森北出版「化学辞典（第2版）」

栄養・生化学辞典

アコニターゼ

　［EC4.2.1.3］．アコニット酸水添加酵素，アコニット酸ヒドラターゼともいう．TCAサイクルの一酵素で，クエン酸をcis-アコニット酸を中間体としてイソクエン酸にする酵素．ミトコンドリアに局在．

出典　朝倉書店