精選版 日本国語大辞典 「アメリカンフットボール」の意味・読み・例文・類語
アメリカン‐フットボール
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アメリカでは単にフットボールという。アメリカ大陸発見後、イギリスからの移住者が持ち込んだサッカー、ラグビーをもとにして、アメリカで独自につくられたフットボール競技である。
[服部慎吾]
1869年、ニュー・ブランズウィック(ニュー・ジャージー州)でプリンストン大学とラトガース大学がアメリカ最初のフットボールの対抗試合を行っている。ただし、この試合はイギリス蹴球(しゅうきゅう)協会のサッカーのルールによるものである。一方、1872年にイングランド・ラグビー協会がイギリスで発足、いち早くそのルールを取り入れたカナダのマックギル大学と学内にボストンゲーム(ラグビーに似たフットボールの一種)の伝統をもつハーバード大学との間で、1874年5月14日にボストンゲーム、その翌日にラグビーの試合が行われた。この経験からハーバード大学チームによって両者とサッカーをあわせたルールが考え出された。この新ルールはアメリカ人気質(かたぎ)にもよくあい、1876年にはコロンビア、ハーバード、プリンストン、エール、ラトガースの5大学により全米フットボール連盟が創立されるに至った。1880年フットボールの父といわれるウォルター・キャンプ(エール大学の主将。その後長くフットボールの規則委員を務めた)によって競技人数が現行の11人となり、4回連続攻撃の採用、必須(ひっす)前進距離(10ヤード=約9.1メートル)の制定など画期的なルール改正がなされ、現在のアメリカンフットボールの基礎がつくられた。その後、規則の改正、用具の改良、競技法の進歩などにより、アメリカの国民性に適したアメリカ最大のスポーツに成長した。
アメリカにおけるフットボールのシーズンは、大学の場合9月から11月までで、この間に優秀な成績を収めたチームは年末から年始に各地で行われる招待試合に出場の資格を得る。この試合は競技場がボウルbowl(椀(わん))の形に似ていることからボウルゲームとよばれ、開催地の特産物の名がつけられた。そしてパサディナのローズボウル、ニュー・オーリンズのシュガーボウル、マイアミのオレンジボウル、ダラスのコットンボウルが四大ボウルゲームとよばれた。その後、コットンボウルにかわって、ニュー・オーリンズのフィエスタボウルが四大ボウルの一角を占めることとなった。伝統的対抗試合にはエール大学対ハーバード大学、陸軍士官学校対海軍兵学校があり、いずれも1890年以来の歴史がある。フットボールには、はでな応援合戦がつきもので、これも大きな見ものの一つになっている。なお、プロチームが結成されたのは1920年で、ナショナルフットボールリーグの下に2007年現在は32チームがあり、9月から12月まで各地で試合を行い、2月上旬に行われるスーパーボウルで選手権を争い、大学の試合を凌駕(りょうが)する人気を集めている。
日本では1934年(昭和9)立教大学教授ポール・ラッシュ、同大学体育主事ジョージ・マーシャル、同大学教授小川徳治、明治大学教授松本滝蔵らの尽力で、この競技に興味をもつ早稲田(わせだ)、明治、立教の学生(アメリカ日系二世が主力)がチームを編成したことに始まる。同年11月29日アメリカの感謝祭当日、明治神宮外苑(がいえん)競技場(現、国立競技場)において、前記3大学選抜選手と横浜外国人クラブとの間で日本における最初の試合が行われた。翌月、前記3大学を中心に東京学生米式蹴球連盟が設立され、初代理事長にポール・ラッシュが就任し、第1回リーグ戦が行われ、明治大学が優勝した。1935年3月南カリフォルニア大学を中心とした選抜軍が来日し、本格的なプレーを紹介した。この年、慶応、法政の2大学が東京学生米式蹴球連盟に加入し、関西では関西大学がチームを編成した。翌1936年には東京学生米式蹴球連盟選抜チームがアメリカに遠征、新技術を習得して帰国し、これにより日本のフットボールは目覚ましい技術向上を遂げた。
1938年には日本米式蹴球協会が設立された。その後戦時体制に入り国策から名称を「鎧球(がいきゅう)」と変えたが、1943年には中止になった。第二次世界大戦後ただちに復活し、タッチフットボール(防具を使わず、タックルのかわりに両手でタッチする)を中学校、高等学校に普及させたことにより、現在では社会人、大学、高校で合計約450のチームが協会加盟し、全国各地で試合が行われている。毎年12月に行われる学生王座決定戦の甲子園ボウルと、正月に行われるライスボウル(日本選手権、1983年までは東西学生選抜戦)は、日本フットボール界の最大行事である。なおシーズンもルールもアメリカの大学とほぼ同じである。
[服部慎吾]
競技場は縦360フィート、横160フィートの長方形で、その両端におのおの30フィートのエンドゾーンを含む地域からなる。ゴールポストはエンドラインの中央に立てられ、その幅は18フィート6インチ、2本のポールの高さは30フィート以上で地上10フィートに水平のバーが取り付けられている。サイドライン上は10ヤード・チェーンとダウン標示器が移動して試合の進行を標示する。5~7人の審判員が試合を管理する(1ヤード=91.44センチメートル、1フィート=30.48センチメートル、1インチ=2.54センチメートル)。
激しい競技なので危害防止のため、選手はすべて頭にはヘルメットをかぶり、頸(くび)、肩、胸の保護にショルダーパッド、腰にはヒップパッドなどの防具をユニフォームの下に着用する。ユニフォームは敵・味方が対照的な色彩のもので、胸と背に、バックは1から49まで、エンドを除くラインは50から79、エンドは80から99の番号をつける。ボールは4枚の皮でつくられ、長軸10と8分の7インチから11と16分の7インチ、短軸外周20.75インチから21.25インチの楕円(だえん)形で10~13.5ポンド/平方インチの空気圧を充満したものを用いる。
[服部慎吾]
1チーム11人ずつが、ボールを持って相手のゴールを陥れる。野球と同様に、攻撃側と防御側が明白に区分されており、攻撃側はボールを保持し、与えられた4回の連続攻撃権の間に10ヤード以上前進した場合には、その地点から新たに4回の攻撃権が与えられる。4回の攻撃で10ヤード前進できなかった場合は、相手側に攻撃権を譲らなければならない。これを繰り返し、相手のエンドゾーンにボールを持ち込むとタッチダウンとなる。得点はタッチダウンが6点、その後相手側の3ヤードの地点で一度だけトライの権利が与えられ、これでタッチダウンをした場合は2点、フィールド・ゴールの場合には1点が追加される。そのほかフィールド・プレーからのフィールド・ゴールは3点、セーフティは2点である。競技時間は正味60分で、15分ごとの4節に分けられ、第1、第2節を前半、第3、第4節を後半とし、前半と後半の間には通常15分のハーフタイムがある。選手交代はボールがデッドになっている間に行い、制限はない。両チームに前半・後半各3回、1回につき1分30秒のタイムアウトが与えられる。
試合は開始3分前にコインを投げ、それに勝ったほうにキックかレシーブかの選択権が与えられる。キックは自陣35ヤードから相手側に蹴(け)り込む。これによって試合が開始される。このボールを捕球したレシーブチームの選手はタックルされるまで前進し、タックルされた地点から4回の連続攻撃権が与えられる。この各回の攻撃はセンターによるスナップにより開始される。スナップの際は、両軍のラインがボールをなかに挟んで横一列に向きあう。この場合攻撃側は7人以上の選手をスクリメージラインに置かなければならない。両軍とも、ボールの長軸の両先端を通るゴールラインと平行の線の空間(ニュートラルゾーン)に攻撃側のセンターを除く選手の身体のどの部分も侵入させてはいけない。攻撃側はボールがスナップされる前最低1秒間は静止しなくてはならない。
このスクリメージとは、スナップで開始される両チームの攻防の行為を意味し、ボールを受け取ってプレーが開始される。このボールを受け取ったバックは突進するか、前方にいる味方の選手にフォワード・パスするか、キックするかによって地域的前進を図る。この場合ラン、パス、キックのいずれを選ぶかは、その位置、ダウンの数、敵の状態、天候などを総合的に判断して、スクリメージ前のハドルでクォーターバックが指示する。キックを除くプレーは、ランナーがタックルされるか、場外に出た場合はボールはデッドとなり、その地点から次のスクリメージを行う。フォワード・パスが不成功に終わったときは、前の地点で次のスクリメージとなる。フィールド・ゴール以外のスクリメージキックは、4回の攻撃で必須前進距離が不可能と判断したとき、敵に攻撃権を譲るかわりに、ボールを敵陣深く蹴り込み、敵の攻撃距離を長くするために行う。このようにスクリメージを繰り返し、臨機応変のプレーを駆使してボールを前進させ、防御側はこれを阻止する。ここに激しい肉弾戦が展開される。
反則に対する罰則は距離で科せられる。すなわち、反則を犯したチームには、その反則の種類によって、5~15ヤードを、自陣のゴールラインの方向に後退させられ、その地点から次のスクリメージが開始される。選手交代は自由であるが、最近は攻撃と防御の2チームを用意し、攻防が移動するたびに全員が交代するツープラトン・システムの採用が多くなっている。
一つのチームが1試合に使うフォーメーションは平均20~30で、フォーメーションごとにひとりひとりの動き方が違うので、選手はこれを完全に覚え込まねばならない。
[服部慎吾]
NFLでは、タッチダウン後のトライを行うのは2ヤード地点、キックオフは自陣30ヤードからとなっている。また、ポジションによる背番号規定に例外がある。
[編集部]
『野崎和夫他著『アメリカン・フットボール』(1980・成美堂出版)』▽『『70年の歩み 日本アメリカンフットボール審判協会関東審判部創部50周年記念』(2004・日本アメリカンフットボール審判協会関東審判部)』▽『『アメリカンフットボール公式規則・公式規則解説書』各年版(日本アメリカンフットボール協会)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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