アルテリ(英語表記)artel'

改訂新版 世界大百科事典 「アルテリ」の意味・わかりやすい解説

アルテリ
artel'

ロシアソ連邦における小生産者または労働者の経済的目的追求のための自主的な共同組織。チュルク語のortak(組合起源ともイタリア語のartieri(職人たち)起源ともいわれる。17世紀にこの語は現れるが,農奴解放後この種の組織は多様に発達し語義も多様化した。革命前の小生産者アルテリとしては,たとえば共同労働を行う漁労アルテリ,共同出資の作業場をもつ酪農家の共同利用アルテリ,共同購入・販売を行う諸種の協同組合型組織,石工の相互扶助組織など。ここでは構成員の契約,同権,連帯責任制原則とされる。ナロードニキはこのようなアルテリを一般に社会の非資本主義的組織化に導きうるロシア特有の形態と考えた。しかしレーニンは資本主義社会体制内では構成員中の富裕者がこれを支配する傾向が強いとして,ナロードニキの考えを批判した。とはいえ以上の小生産者アルテリとは異なって賃労働者アルテリの場合,次のような注目すべき性格もみられる。たとえば同村出身者がリーダーもとにまとまって工場資本家に雇われる出稼ぎ農民的賃労働者のいわゆる同村アルテリでは,資本のもとでの共同労働と共同生活経験ストライキのとき生かされて,対資本の闘争組織として機能した例もある。なお,旧ソ連の社会主義農業の経営形態として問題にされるアルテリについては,〈コルホーズ〉の項目を参照されたい。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のアルテリの言及

【コルホーズ】より

…生産手段の共同化の段階に応じて,コルホーズは三つの形態に区分された。最も初級の形態は,耕地だけを共同化した土地共同耕作組合(トーズ),次いで耕地と家畜・農具の主要部分を共同化したアルテリ(ここでは屋敷付属地(菜園)の私的利用が認められ,その耕作に必要な生産手段および若干の家畜の私的所有が認められた),最後に共同化の完全な形態がコムーナと呼ばれた。このようなコルホーズの建設が農業集団化である。…

※「アルテリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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