精選版 日本国語大辞典 「組合」の意味・読み・例文・類語
くみ‐あい ‥あひ【組合】
くみ‐あわせ ‥あはせ【組合】
くみ‐あ・う ‥あふ【組合】
くみ‐あわ・せる ‥あはせる【組合】
くみ‐あわ・す ‥あはす【組合】
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって効力を生ずる契約をいう(民法667条1項)。出資は,金銭に限らず,金銭以外の物の所有権,債権,無体財産権などでもよい。労務をもってその目的とすることができる(同条2項)。組合契約により,共同の事業のための団体が成立することになるが,団体については,別個に法人制度がある(民法33条以下,商法165条以下など)。法人においては,団体自体が権利の主体となるのであるが,組合においては,組合員が契約により結合しているだけであって,組合自体が権利の主体となることはない。法人の中には,農業協同組合,労働組合のように,特別法によって権利の主体となることが認められている〈特別法上の組合〉があるが,これと民法上の組合とは異なる。また,法人とはされていないが,実質的には法人類似の組織をもつものとして〈権利能力なき社団〉があるが,これには民法上の組合の規定を適用すべきではなく,可能な限り,法人の規定を類推適用すべきものとされている。民法上の組合は,数人の同業者が共同仕入れのための事務所を設ける場合や,請負事業において数社が共同企業体を構成するような場合に成立し,法人における場合と異なり,構成員の個性が取引において重視される。
組合の財産関係については,各組合員の出資その他の組合財産が総組合員共有に属するとされる(民法668条)。しかしここにいう共有は,文字どおりの共有(249条)ではなく,組合員の持分が拘束された状態にある共同所有とみられ,これを合有と称する。その結果,組合員が組合財産につきその持分を処分したときは,その処分はこれをもって組合および組合と取引をした第三者に対抗することができず(676条1項),組合員は,清算前に組合財産の分割を求めることができない(同条2項)。組合の債権債務についても同様の拘束が働き,債権債務の合有的帰属が認められる。その結果,組合の債務者は,その債務と組合員に対する債権とを相殺することができない(677条)。
そのほか,組合財産に関しては,金銭をもって出資の目的とした場合に組合員がその出資を怠ったときは,その組合員は,その利息を払うほか損害の賠償をすることを要するとされる(669条)。また,組合員の損益分配の割合に関しては,当事者がこれを定めていなかったときは,その割合は,各組合員の出資の価額に応じてこれを定めるものとし,利益または損失についてのみ分配の割合を定めたときは,その割合は,利益および損失に共通なものと推定するとされる(674条)。組合の債権者に対する各組合員の損失分担の割合については,債権者は,その債権発生の当時これを知らなかったときは,各組合員に対して均一部分につきその権利を行うことができるとされる(675条)。
組合の業務執行については,各組合員がこれを行うのが原則だが,とくに業務執行者を定めることもできる。組合の業務執行は,組合員の過半数をもって決する(670条1項)。組合契約をもって業務執行を委任した者が数人いるときは,その過半数をもってこれを決する(同条2項)。組合の日常の軽微な事務は,各組合員または各業務執行者がこれを専行することができる。ただし,その結了前に他の組合員または業務執行者が異議を述べたときは,この限りでない(同条3項)。組合の業務を執行する組合員には,委任に関する規定(644条から650条まで)が準用される(671条)。業務執行者は,正当の事由がなければ辞任をすることができず,また解任されることはない(672条1項)。正当の事由によって解任をするには,他の組合員の一致があることを要する(同条2項)。各組合員は,組合の業務を執行する権利を有しないときは,その業務および組合財産の状況を検査することができる(673条)。組合の対外的業務については,各組合員が他の組合員を代理して行うことができるが,業務執行者を定めて,この者が代表して行うこともできる。
組合員の脱退には,任意脱退と非任意脱退とがある。組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき,またはある組合員の終身間組合の存続すべきことを定めたときは,各組合員は,いつでも脱退をすることができる。ただし,やむをえない事由がある場合を除くほか,組合のため不利な時期にこれをすることができない(678条1項)。組合の存続期間を定めたときでも,各組合員は,やむをえない事由があるときは脱退をすることができる(同条2項)。以上が任意脱退に関する民法の規定である。組合員は,前記の事由のほか死亡,破産,禁治産,除名の事由があるときに,当然に脱退するものとされる(679条)。これが非任意脱退であるが,このうち除名は,正当の事由がある場合に限って組合員の一致でこれをする(680条)。なお脱退組合員には持分の払戻しが認められる(681条)。
組合の解散事由は,目的の事業の成功または成功の不能であるが(682条),やむをえない事由があるときは,各組合員は解散を請求することができる(683条)。組合が解散すると清算が行われる。清算は,総組合員共同で,またはその選任した者がこれを行う(685条)。
執筆者:川井 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
職業労働条件の向上のために、あるいは営業上の利害のために、ときには生活の相互扶助のために、目的を共通にする人々が、一種の契約に従って構成する団体。近代以前の社会では、職業を同じくする商工業者が営業上の利益を守るために「座」や「株仲間」をつくったり、町人たちが生活の相互扶助や一時的融資の便のために「頼母子講(たのもしこう)」あるいは「無尽講」をつくったり、農民たちが近隣のもの同士で「五人組」などをつくっており、これらもある意味では組合とみなすことができる。しかしこうした団体は、基本的にはその時代の支配者層の政策あるいは意向にかなう限りで構成されたものが多く、成員の自由な判断と自主的な意欲に基づく相互の契約を媒介にして構成されたものではなかった。
本来の組合が多様な種類と形態をもって族生するようになるのは、近代社会が成立し、成熟してからであった。近代社会の発展とともに、資本家階級と労働者階級の階級的対立が激化してきた。同時に自営業層、労働者階級内部の諸階層相互の関係も複雑になるとともに、その利害対立も錯綜(さくそう)してきた。また、それぞれの階層が自らの利害と理念に応じて団体を結成する自由も拡大してきた。そしてこのような団体が、法的にも組合として明確に承認されるようになった。
[元島邦夫]
近代社会における組合として代表的なものは労働組合法によって規定されている労働組合である。これは、労働条件の維持、改善と、労働者の社会的地位向上を目的として、労働者が自らの力で自主的に結成した団体であるとされている。したがって政党などとは異なり、さまざまな思想、信条の持ち主をその成員として含んでいる。思想、信条の違いを越えて、労働者としての要求を達成する点で、合意に基づいて一致協力するところに、労働組合としてのまとまりが形成されるのである。しかし労働者内部では、階層、職業、企業、地域によって、要求の内容、その達成の仕方が異なることは十分ありうる。そのために、労働組合が一つの国民経済において一つだけ組織されることは少なく、多くの場合、労働組合はさまざまな組織に分かれる結果となる。また、その活動方針も活動形態も多様なものとなるのである。
労働者のみならず自営業者層も、営業上、生活上のさまざまな問題を解決するために組合を結成することがある。生産、分配、消費をめぐる課題について、共同の利益を守るために結成される協同組合がそれである。商品生産者として弱い立場に置かれている農民は、農村生活、農業経営のあり方を民主化、合理化し、相互の一致団結によって信用事業と購買事業を発展させ、営業上有利な立場を社会のなかで樹立しようとしてきた。そのために、農業協同組合法に基づいて設立され、現在までその活動を発展させてきたのが農業協同組合である。また市民は、消費者という立場から、大資本による価格操作、非合理的な流通機構による諸経費の消費者物価へのしわ寄せなどに対抗して、生産、流通のメカニズムを直接担い、よりよい商品をより安い価格で手に入れようとして、消費生活協同組合法に基づく消費生活協同組合をつくりあげ育ててきた。このほかにも商工協同組合法による商工協同組合、国民健康保険法による国民健康保険組合などがある。
[元島邦夫]
このように現在では、多様な組合がそれぞれの階層的利害、市民的利害に基づいて数多くつくりだされている。そのなかには、労働組合はもちろんのこと、前述した農業協同組合や消費生活協同組合のように、全国的な組織にまで成長し、大きな財政力と発言力とを兼ね備えるようになったものもある。これらのいわば巨大組合は、審議会にその代表を送り込んだり、財政力、選挙時における集票能力などを背景として、ある種の圧力をかけたりして、政策決定のあり方を左右するまでになっている。組合はここでは圧力団体となったり、政策参加の主体的担い手となったりしているのである。こうした意味でも、組合は現代社会のあり方を規定する重要な一要素となりつつある。
[元島邦夫]
『栗田健著『労働組合』(1983・日本労働協会)』
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
3/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
2/13 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
1/12 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
12/11 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/10 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新