組合(読み)くみあい

精選版 日本国語大辞典 「組合」の意味・読み・例文・類語

くみ‐あい ‥あひ【組合】

〘名〙
① 互いに組み合って争うこと。組み打ち。取り組み。格闘。
② ある目的で、何人かが仲間をつくること。また、その人々。組。
洒落本・売花新駅(1777)発端「定会のくずれより近頃組合(クミアイ)となりし嵐興といふ息子〈略〉をそそのかして」
③ 民法上、二人以上が出資して共同事業を営むことを約束する契約によって成立する団体。消費組合など。
※民法(明治二九年)(1896)六七〇条「組合の業務執行は組合員の過半数を以て之を決す」
④ 特別法によって、特定の共同目的の遂行のために、一定の資格のある人々が組織することを認められている団体。公共組合協同組合共済組合など。
※農商務省達第三七号‐明治一七年(1885)一一月二九日・三条「同業組合の規約に掲ぐべき事項は左の如し 第一項 組合を組織する業名及組合の名称」
※若い人(1933‐37)〈石坂洋次郎〉下「沖仲仕の組合の書記かなんかしてるんだって」
地方公共団体がその事務の全部または一部を共同処理するために設ける組合。特別地方公共団体の一つ。
地方自治法(1947)二八四条「普通地方公共団体及び特別区は、〈略〉地方公共団体の組合を設けることができる」

くみ‐あわせ ‥あはせ【組合】

〘名〙
① いろいろなものを適当にとり合わせて一まとめにすること。
※春潮(1903)〈田山花袋〉一一「明朝六時に此処を立って西那須野の三番に乗ることに決めたらしく、行李やら鞄やらの組合せに忙はしい様子」
② 二つ以上のものを、あわせて一そろいのものとすること。また、そのもの。
※蔵の中(1918‐19)〈宇野浩二〉「帯だけをちょっと巻きかへて見たり、あるひは羽織と着物の組み合はせを変へてみたり」
スポーツなどで勝負を争う組を作ること。
④ 数学で、いくつかの互いに区別することのできるものの中から、一定の個数のものを取り出して作った組。取り出した順序は問題にしない。コンビネーション。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕

くみ‐あ・う ‥あふ【組合】

〘自ワ五(ハ四)〙
① 互いに交差させて離れないようにする。
四河入海(17C前)二「蓬莱より一峯が浮び来て浮山と羅山とが合して、山の根株が互に連絡してくみやうて一の山となるぞ」
② 互いに取り組む。組み打ちをする。とっくみあう。格闘する。〔日葡辞書(1603‐04)〕
浮世草子・けいせい伝受紙子(1710)四「是は正しく今の組(クミ)あいしぬす人が、取おとして行しものならん」
③ 組んで仲間となる。いっしょになる。一群となる。
七十一番職人歌合(1500頃か)六三番「左右ともに、心詞くみあひたるけいばすまふなれば」

くみ‐あわ・せる ‥あはせる【組合】

〘他サ下一〙 くみあは・す 〘他サ下二〙
① からみ合わせたり、交差させたりしてつなぎ合わせる。
※平家(13C前)八「千余艘がとも綱、へづなをくみあはせ」
② 二つ以上のものを合わせて、一そろいのものとする。取り合わせる。
※甲陽軍鑑(17C初)品二七「一手の様にそなへをたて、くみあはせて、一戦のすべを執行たまふ」
③ スポーツなどで勝負を争う相手を決める。

くみ‐あわ・す ‥あはす【組合】

[1] 〘他サ五(四)〙 =くみあわせる(組合)
※めぐりあひ(1888‐89)〈二葉亭四迷訳〉二「スラリとした体をすこし屈(こご)めて、手を組合はしながらゆく」
[2] 〘他サ下二〙 ⇒くみあわせる(組合)

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デジタル大辞泉 「組合」の意味・読み・例文・類語

くみ‐あい〔‐あひ〕【組合】

(組み合い)互いに組みついて争うこと。組み打ち。「取っ組み合い
共通の目的のために何人かが寄り合って仲間を作ること。また、その人々。組。
「まさか一人じゃあるまい。―か」〈鴎外・普請中〉
民法上、二人以上の者が出資し合って共同の事業を営むことを約束する契約によって成立する団体で、法人となる資格がないもの。
特別法によって、特定の共同目的を果たすために、一定の資格のある者で組織することを認められている団体。協同組合共済組合など。
労働組合」の略。「組合運動」
[類語]協会法人協同組合団体組織結社連盟ユニオンソサエティーアソシエーション

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改訂新版 世界大百科事典 「組合」の意味・わかりやすい解説

組合 (くみあい)

各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって効力を生ずる契約をいう(民法667条1項)。出資は,金銭に限らず,金銭以外の物の所有権,債権,無体財産権などでもよい。労務をもってその目的とすることができる(同条2項)。組合契約により,共同の事業のための団体が成立することになるが,団体については,別個に法人制度がある(民法33条以下,商法165条以下など)。法人においては,団体自体が権利の主体となるのであるが,組合においては,組合員が契約により結合しているだけであって,組合自体が権利の主体となることはない。法人の中には,農業協同組合,労働組合のように,特別法によって権利の主体となることが認められている〈特別法上の組合〉があるが,これと民法上の組合とは異なる。また,法人とはされていないが,実質的には法人類似の組織をもつものとして〈権利能力なき社団〉があるが,これには民法上の組合の規定を適用すべきではなく,可能な限り,法人の規定を類推適用すべきものとされている。民法上の組合は,数人の同業者が共同仕入れのための事務所を設ける場合や,請負事業において数社が共同企業体を構成するような場合に成立し,法人における場合と異なり,構成員の個性が取引において重視される。

組合の財産関係については,各組合員の出資その他の組合財産が総組合員共有に属するとされる(民法668条)。しかしここにいう共有は,文字どおりの共有(249条)ではなく,組合員の持分が拘束された状態にある共同所有とみられ,これを合有と称する。その結果,組合員が組合財産につきその持分を処分したときは,その処分はこれをもって組合および組合と取引をした第三者に対抗することができず(676条1項),組合員は,清算前に組合財産の分割を求めることができない(同条2項)。組合の債権債務についても同様の拘束が働き,債権債務の合有的帰属が認められる。その結果,組合の債務者は,その債務と組合員に対する債権とを相殺することができない(677条)。

 そのほか,組合財産に関しては,金銭をもって出資の目的とした場合に組合員がその出資を怠ったときは,その組合員は,その利息を払うほか損害の賠償をすることを要するとされる(669条)。また,組合員の損益分配の割合に関しては,当事者がこれを定めていなかったときは,その割合は,各組合員の出資の価額に応じてこれを定めるものとし,利益または損失についてのみ分配の割合を定めたときは,その割合は,利益および損失に共通なものと推定するとされる(674条)。組合の債権者に対する各組合員の損失分担の割合については,債権者は,その債権発生の当時これを知らなかったときは,各組合員に対して均一部分につきその権利を行うことができるとされる(675条)。

組合の業務執行については,各組合員がこれを行うのが原則だが,とくに業務執行者を定めることもできる。組合の業務執行は,組合員の過半数をもって決する(670条1項)。組合契約をもって業務執行を委任した者が数人いるときは,その過半数をもってこれを決する(同条2項)。組合の日常の軽微な事務は,各組合員または各業務執行者がこれを専行することができる。ただし,その結了前に他の組合員または業務執行者が異議を述べたときは,この限りでない(同条3項)。組合の業務を執行する組合員には,委任に関する規定(644条から650条まで)が準用される(671条)。業務執行者は,正当の事由がなければ辞任をすることができず,また解任されることはない(672条1項)。正当の事由によって解任をするには,他の組合員の一致があることを要する(同条2項)。各組合員は,組合の業務を執行する権利を有しないときは,その業務および組合財産の状況を検査することができる(673条)。組合の対外的業務については,各組合員が他の組合員を代理して行うことができるが,業務執行者を定めて,この者が代表して行うこともできる。

組合員の脱退には,任意脱退と非任意脱退とがある。組合契約で組合の存続期間を定めなかったとき,またはある組合員の終身間組合の存続すべきことを定めたときは,各組合員は,いつでも脱退をすることができる。ただし,やむをえない事由がある場合を除くほか,組合のため不利な時期にこれをすることができない(678条1項)。組合の存続期間を定めたときでも,各組合員は,やむをえない事由があるときは脱退をすることができる(同条2項)。以上が任意脱退に関する民法の規定である。組合員は,前記の事由のほか死亡,破産,禁治産,除名の事由があるときに,当然に脱退するものとされる(679条)。これが非任意脱退であるが,このうち除名は,正当の事由がある場合に限って組合員の一致でこれをする(680条)。なお脱退組合員には持分の払戻しが認められる(681条)。

 組合の解散事由は,目的の事業の成功または成功の不能であるが(682条),やむをえない事由があるときは,各組合員は解散を請求することができる(683条)。組合が解散すると清算が行われる。清算は,総組合員共同で,またはその選任した者がこれを行う(685条)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「組合」の意味・わかりやすい解説

組合
くみあい

職業労働条件の向上のために、あるいは営業上の利害のために、ときには生活の相互扶助のために、目的を共通にする人々が、一種の契約に従って構成する団体。近代以前の社会では、職業を同じくする商工業者が営業上の利益を守るために「座」や「株仲間」をつくったり、町人たちが生活の相互扶助や一時的融資の便のために「頼母子講(たのもしこう)」あるいは「無尽講」をつくったり、農民たちが近隣のもの同士で「五人組」などをつくっており、これらもある意味では組合とみなすことができる。しかしこうした団体は、基本的にはその時代の支配者層の政策あるいは意向にかなう限りで構成されたものが多く、成員の自由な判断と自主的な意欲に基づく相互の契約を媒介にして構成されたものではなかった。

 本来の組合が多様な種類と形態をもって族生するようになるのは、近代社会が成立し、成熟してからであった。近代社会の発展とともに、資本家階級と労働者階級の階級的対立が激化してきた。同時に自営業層、労働者階級内部の諸階層相互の関係も複雑になるとともに、その利害対立も錯綜(さくそう)してきた。また、それぞれの階層が自らの利害と理念に応じて団体を結成する自由も拡大してきた。そしてこのような団体が、法的にも組合として明確に承認されるようになった。

[元島邦夫]

特別法上の各種組合

近代社会における組合として代表的なものは労働組合法によって規定されている労働組合である。これは、労働条件の維持、改善と、労働者の社会的地位向上を目的として、労働者が自らの力で自主的に結成した団体であるとされている。したがって政党などとは異なり、さまざまな思想、信条の持ち主をその成員として含んでいる。思想、信条の違いを越えて、労働者としての要求を達成する点で、合意に基づいて一致協力するところに、労働組合としてのまとまりが形成されるのである。しかし労働者内部では、階層、職業、企業、地域によって、要求の内容、その達成の仕方が異なることは十分ありうる。そのために、労働組合が一つの国民経済において一つだけ組織されることは少なく、多くの場合、労働組合はさまざまな組織に分かれる結果となる。また、その活動方針も活動形態も多様なものとなるのである。

 労働者のみならず自営業者層も、営業上、生活上のさまざまな問題を解決するために組合を結成することがある。生産、分配、消費をめぐる課題について、共同の利益を守るために結成される協同組合がそれである。商品生産者として弱い立場に置かれている農民は、農村生活、農業経営のあり方を民主化、合理化し、相互の一致団結によって信用事業と購買事業を発展させ、営業上有利な立場を社会のなかで樹立しようとしてきた。そのために、農業協同組合法に基づいて設立され、現在までその活動を発展させてきたのが農業協同組合である。また市民は、消費者という立場から、大資本による価格操作、非合理的な流通機構による諸経費の消費者物価へのしわ寄せなどに対抗して、生産、流通のメカニズムを直接担い、よりよい商品をより安い価格で手に入れようとして、消費生活協同組合法に基づく消費生活協同組合をつくりあげ育ててきた。このほかにも商工協同組合法による商工協同組合、国民健康保険法による国民健康保険組合などがある。

[元島邦夫]

組合の二面的性格

このように現在では、多様な組合がそれぞれの階層的利害、市民的利害に基づいて数多くつくりだされている。そのなかには、労働組合はもちろんのこと、前述した農業協同組合や消費生活協同組合のように、全国的な組織にまで成長し、大きな財政力と発言力とを兼ね備えるようになったものもある。これらのいわば巨大組合は、審議会にその代表を送り込んだり、財政力、選挙時における集票能力などを背景として、ある種の圧力をかけたりして、政策決定のあり方を左右するまでになっている。組合はここでは圧力団体となったり、政策参加の主体的担い手となったりしているのである。こうした意味でも、組合は現代社会のあり方を規定する重要な一要素となりつつある。

[元島邦夫]

『栗田健著『労働組合』(1983・日本労働協会)』

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百科事典マイペディア 「組合」の意味・わかりやすい解説

組合【くみあい】

(1)民法上の組合。数人が出資をして共同の事業を営む契約(民法667条以下)。有償・双務・諾成・不要式の契約とされる。出資は,金銭その他の財産,あるいは労務でもよい。事業は,営利を目的とするものでも,親睦を目的とするものでもよい。その団体性は社団ほど強くはなく,普通は法人格を持たない。組合財産は総組合員の共有とされ,組合の業務執行は組合員の過半数で決める。(2)特別法上の組合。各種の共同目的遂行のための社団法人の一形態として用いられ,公共組合,協同組合,同業組合,労働組合,共済組合などがある。ほかに特殊なものとして,地方公共団体がその事務の全部または一部を共同処理するために設けた組合がある(学校組合など)。(3)中世以来の商工業者の相互扶助の職業的な結合。ともいう。
→関連項目金融業権利能力なき社団合同会社有限責任事業組合

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「組合」の意味・わかりやすい解説

組合
くみあい

民法上,数人が各自の出資により共同の事業を営むことを約して成立する契約 (667条1項) 。組合はある程度の団体性を有するところから,合同行為であると解する見解もある。組合財産は総組合員の共有であると規定されているが (668条) ,組合員間に弱いながらも団体的結合が存在するため,単なる共有ではなく合有と理解されている。組合の業務執行は持分による多数決で決定されるが,常務については原則として各組合員に執行権がある (670条) 。なお一般に組合と呼ばれるもののうち,協同組合,共済組合などは,特別法で法人とされている。 (→労働組合 )  

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