ウルガタ訳聖書(読み)ウルガタやくせいしょ(その他表記)Vulgata

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ウルガタ訳聖書」の意味・わかりやすい解説

ウルガタ訳聖書
ウルガタやくせいしょ
Vulgata

ヒエロニムスによって訳され,西方教会において最も広く用いられてきた聖書のラテン語訳。2世紀以来西方教会で用いられていたラテン語訳聖書本文 (→イタラ訳聖書 ) に不備が多く混乱が生じていたため,382年教皇ダマスス1世の要請によって翻訳が始められた。新約のうち福音書はギリシア語本文をもととして,イタラ訳の改訂が行われた。旧約は初めギリシア語訳をもとにして開始されたが,やがてヘブライ語原文からの翻訳に改められ,15年 (390~405) を経て完成された。福音書以外の新約各書の改訂訳はヒエロニムスのものでないとされるが,だれの手によるのかはわからない。この訳本は従来のラテン語訳よりすぐれていたため,次第に一般に用いられるようになり (普及版を意味する「ウルガタ」の名はここに由来する) ,6世紀頃には旧・新約各書の翻訳のすべてが一本にまとめられるにいたった。現存最古の手写本は,690年頃に書かれたアミアチヌス写本 (旧・新約全部を含む) である。ウルガタ訳はカトリック教会で重用されてきたが,1546年トリエント公会議はこれを唯一の権威あるラテン語聖書と宣言し,90年教皇シクスツス5世によって決定版が作られた。しかしその後も改訂版作成がたびたび試みられている。

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