日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヒエロニムス」の意味・わかりやすい解説
ヒエロニムス
ひえろにむす
Eusebius Sophronius Hieronymus
(345ころ―419/420)
ラテン教父、聖書学者、聖人。英名ジェロームJerome。ダルマチア近くのストリドンに生まれる。12歳でローマへ赴き、文法・修辞学を学び、19歳で受洗。のちガリアを旅行し、同地で修道院生活を決意した。アクィレイアで友人とともに禁欲生活を始めたが、372年突如旅に出て、アンティオキアにとどまり、重病の床で「汝(なんじ)はキケロ主義者にてキリスト者にあらず」という声を聞き覚醒(かくせい)し、砂漠に退いた。そのころギリシア語とヘブライ語を学ぶ。一時教皇ダマスス1世Damasus Ⅰ(在位366~384)の秘書となり、のちベスレヘムに定住し、学問に没頭して東方神学の西方教会への移入に努め、ラテン世界に多大の影響を与えた。その最大にして不滅の功績は、聖書のラテン語訳(『ブルガーター』)である。該博な言語知識、古典への精通、綿密な研究旅行と多数の学者との交友の成果をもって西欧における修道生活への道を開拓し、翻訳、著述に専念したラテン教会の代表的著述家の一人となった。
[朝倉文市 2017年12月12日]