オプジーボ(読み)おぷじーぼ

デジタル大辞泉 「オプジーボ」の意味・読み・例文・類語

オプジーボ(Opdivo)

免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブ」の商品名。

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知恵蔵 「オプジーボ」の解説

オプジーボ

がん免疫療法に用いる薬剤で、一般名はニボルマブ。日本では、2014年7月に切除術による根治が期待できない悪性黒色腫の治療薬として承認され、同年9月から小野薬品工業が販売を開始した。その後、15年12月に非小細胞肺がん、16年9月に腎細胞がんにも適応が拡大された。
ヒトにはがん化した細胞を見つけて排除する免疫システムが備わっているが、がん細胞はこれを無効化して増殖する性質を持つものがある。オプジーボは、がん細胞が免疫システムを無効化する仕組みを阻止する働きを持つ、免疫チェックポイント阻害剤の一つ。従来抗がん剤が、がん細胞の分裂を抑えて増殖させないようにするものであるのに対し、免疫チェックポイント阻害剤は、ヒトに本来備わっている免疫システムを再活性化することで治療する新しいタイプの抗がん剤である。
オプジーボが作用するのは、T細胞やB細胞の表面にありがん細胞に結び付いてこれらの免疫細胞の働きによってがん細胞を細胞死に導くPD-1である。がん細胞の表面にはPD-1と結び付いて免疫細胞からの働きかけをかわすPD-L1(PD-1に対するリガンド)がある。オプジーボは、このPD-L1が免疫細胞のPD-1に結び付くのを阻止して免疫細胞の働きを再活性化させ、抗PD-1抗体として働く。京都大学の本庶佑博士の研究グループが動物実験によりこれの有効性を02年に発表し、小野薬品工業と共同で特許を取得している。
従来の抗がん剤と比べて副作用は少ないとされるが、治験では倦怠(けんたい)感、発疹吐き気嘔吐(おうと)などの軽い副作用は約8割の患者にみられ、間質性肺疾患、甲状腺機能障害などの重大な副作用が現れる患者もあった。
日本で承認が下りた当初、新しい機序を持つ薬として原価積み上げ方式で薬価が算定されたこと、患者数の少ない悪性黒色腫での申請であったことから、100ミリグラムで約73万円とされた。これは患者1人当たりで換算すると年間約3500万円にも上る。高額療養費制度によって患者自身の負担は月々10万円以内で済むものの、それを超える分が保険財政を圧迫することが懸念された。その後、適応が拡大して販売額が増えたことで、新たに設けられた特例市場拡大再算定の対象となり、17年2月から50%引き下げられるという異例の措置がとられた。

(石川れい子 ライター/2017年)

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知恵蔵mini 「オプジーボ」の解説

オプジーボ

がん免疫治療薬。人が本来もつ免疫力を利用してがん細胞を攻撃するもので、免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれる。一般名称は「ニボルマブ」。がん細胞は病原体を攻撃するキラーT細胞という免疫細胞に対して攻撃を抑制させる信号を発するが、オプジーボはキラーT細胞がこれに惑わされずにがん細胞を攻撃することを助ける。手術や放射線治療といった局所療法や抗がん剤など、従来のがん治療法が十分に効かない患者に対する効果が期待される。日本での販売元は小野薬品工業株式会社。2014年7月に皮膚がんの治療薬として、15年12月に肺がんの治療薬として日本での保険適用が認可された。20年2月には食道がんと一部の結腸・直腸がん治療についても効果が認められ、国内での承認を得た。食道がんでがん免疫治療薬が承認されたのは世界で初めて。

(2020-2-27)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オプジーボ」の意味・わかりやすい解説

オプジーボ
おぷじーぼ

免疫チェックポイント阻害薬

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